「骸ー、ここ分からないんだけど」
「ここ? 上の例題と同じ解き方ですよ。公式に当てはめてやってみてください」
「うん……あ、できた。ありがとう!」
「クフ、その調子ですよ。あと三問ですし、早く終わらせましょう」
「分かった!」
リボーンは銃を磨きつつ、宿題を進める2人を眺めた。
最近、何かと理由を付けて骸が度々沢田家を訪れるので、それを有効活用しようと勉強を教えさせているのだ。
最初は基礎も分かっていなかったツナに呆れていたが、根気強く教えたおかげかだいぶできるようになってきたらしい。
それはツナの成績を危惧しているリボーンにとっても喜ばしいことだが、問題がひとつ。
「……お前ら、いつまでそのカッコで勉強してんだ」
その姿勢というか体勢だ。
骸は胡座をかいている。これは普通。ツナは体育座り。これも普通。だが、ツナの座っている場所がおかしかった。骸の足の間にちょこんと座っているのだ。
傍から見れば後ろから抱き締められているようにしか見えない。
しばらく放置していたが、いい加減に我慢も限界だった。
イチャつくのは余所でやれ。
「何か問題でも? というかもう少しで終わりますし放っておいてくださいよ。……ボンゴレ、どうです? できそうですか?」
「……うーん……この最後の問題がよく……」
「どこですか? ああ、ここは……」
あっさりとリボーンをスルーして解説を始める骸。
完璧に二人の世界を作っている。
……もうムリだ。
「ちょっと出かけてくる」
「え? あ、いってらっしゃーい」
ベッドから降りると、窓から外に出る。
喫茶店にでも行って気分転換しよう。
帰ってくる頃には甘々なオーラが部屋から消えていることを願いながら、リボーンは窓を閉めた。
***
「お帰りー、リボーン」
「……ああ」
リボーンが一時間ほど外で時間を潰して帰ってきたとき、すでに骸の姿はなかった。ひそかにほっとして溜息をつく。
「なあ、ツナ」
「ん? 何?」
「お前って骸と付き合ってんだよな?」
この機会だし問い質して人前でイチャつくのはやめろと言い聞かせるか。
そう思って声をかけたが。
「は? 何言ってんの? オレ達男同士だよ?」
「…………」
……あのイチャつきっぷりでか?!
もしかしたら本気で友達としか思ってないのか。
いや、でもさっきの光景は絶対変だろ。
「じゃああの姿勢は何だ」
「姿勢? 勉強してるときの? 何か問題あった?」
「……横から見てると抱き締められているように見えるんだが」
そのくらい普通に気が付いてほしい。
「そうなの? 別にそんなつもりないけど。骸がここに座った方が教えやすいとか、むしろここに座らないと教えないとか言うからああなってただけで……」
さっきのは骸が強制したと?
……あ〜、なるほど。つまりアイツの片思いか。
全くツナに伝わってないが。コイツの鈍さは天下一品だからな。
リボーンは少しだけ骸に同情した。
ん? でもそれならツナは骸のこと何とも思ってないんだよな。ちょっとくらい嫌がってもおかしくねーのに。
「抵抗とかしないのか?」
「別に変なことされてるわけじゃないし。骸教えるのも上手いしいいかなって」
まあ害はないから流されてるってことだな。
それならほっといても大丈夫か。
そう楽観的に思ったのだが。
「あと……くっついてると何か落ちつくっていうか……オレもアイツから離れたくなくなるんだよな」
どこか照れたように言う教え子の姿に、リボーンは何とも言えない気分を味わった。
***
その夜。リボーンは黒曜に電話をかけた。
『……はい』
「柿本か。オレだが、骸はいるか?」
『骸様は今入浴中だ』
「ちっ。ならアイツにさっさとツナに告るなりなんなりしろって伝えてくれ。アイツ、ツナに惚れてんだろ? 脈はあるから大丈夫だ。もう無自覚に惚気られんのはうんざりだからな」
あれよりなら付き合ってくれた方がすっきりする。自覚があれば少しは遠慮もするだろうし。
だが、千種の返答はリボーンの想像を超えていた。
『……骸様がボンゴレに惚れているのは確かだが、おそらく骸様自身はその感情に気が付いていないから、告白しろと伝えても何のことか分からないと思う……』
「…………は?」
何て言った今。
「骸も自覚してない、だと……?」
あり得ないだろ!!
日を空けずに通ってくる上に、今日なんか不必要に密着して勉強させてたのにか!?
『こちらもかなり困っているんだ……』
その生気のない声にリボーンは何となく理解した。
黒曜の連中も主人に無自覚惚気を聞かされているのだろう。
そういえばときどきツナが黒曜に弁当届けたりしてたし、そのときもあの二人がイチャついているとすれば……
「……お前らも大変だな」
リボーンは心から千種達に同情した。
クロームとかぐれるんじゃないだろうか。不安だ。
『……本当に、早くくっついてくれないだろうか』
「……ああ」
リボーンと千種の溜息が電話越しに重なった。
いっそこうなれば。
「手を貸してでも自覚させた方がいいのか?」
『そう、だな……現状よりはマシかもしれない』
「ならオレはツナを何とかするから、そっちの方で骸を頼めるか」
『分かった。犬やクロームにも協力させる』
「よし、任せたぞ」
ガチャリと電話を切り、リボーンは笑みを浮かべた。
さっさと上手いことくっつけて、このイライラを解消しよう。
***
その後、リボーン達の苦労の甲斐があって二人はくっついたのだが。
(……付き合い始めたら自重するかと思ったのに……)
(何で前よりイチャついてんだよあのバカップルがっ!!)
End
オチが落ちていないorz 力尽きました。
バカップルに振り回される苦労性気味な先生が書きたかった。
up:2011/09/24