ピンポーンとチャイムが鳴った。
骸はそれに眉を顰めるが、無視するわけにはいかず立ち上がる。
玄関に向かい、ドアを開けるとそこに立つのはにこにこと笑う配達員。
「宅急便です、サインお願いします」
「……はい」
「ありがとうございました!」
戸を閉めて受け取ったダンボールを床に置き封を切ると、その中身は。
「やっぱりですか……」
箱一杯に詰められた花言葉以外は全くもって気に食わない某南国果実に骸ははあ、と溜め息をついた。
「今度は跳ね馬……一体今日はどんな厄日なんでしょう」
何故か、朝からずっと宅急便でパイナップルが骸の元に送られてくるのだ。果物そのものでなく缶詰めやゼリーもあるが。
それらの送り主は獄寺や山本、雲雀、など主にボンゴレ関係者。新手のいじめか
何かだろうか。守護者やめたい。
そんなことを考えていると、また呼び鈴の音がして、思わず舌打ちする。……次は誰だくそ。
ドスドスと廊下を踏み鳴らして玄関に向かい、乱暴にドアを開けた。
「……はい、サインなら今……」
「? サインって何だ?」
「っ!? 綱吉??!」
思わぬ来客にどうかしたのかと尋ねようとしたが、そこで骸は彼の手にしているものに気付いてしまった。
「……つ、綱吉……それは……」
「え? ああ、これすごいだろ! 今日の為に沖縄から取り寄せてみたんだ!!」
ジャーンと綱吉が両手で掲げるのは、それはもう立派なあの果実で。
絶望感に打ちひしがれ骸は地面に手を付いた。
「お、おい骸!?」
「綱吉まで僕にいじめを……君だけは信じてたのに……」
「何の話だよ?!!」
「本当今日は何なんですかもう……朝からその南国果実ばっかりっ」
「……今日はお前の日だからだろ?」
「……はい?」
今、何と?
「あ、もしかして知らなかった? 今日語呂合わせでパインの日なんだよ。だからお祝い持って来たんだけど」
「…………」
どうやらいじめではなかったらしい。よかった。いや、つまりそれは僕=アレという方程式が綱吉やボンゴレファミリーの中で成り立っているということだ。それもそれで……
骸が考え込んでいると横からずい、と今現在頭を悩ましているそれが差し出される。
「とりあえず、はい! つーかさ、せっかくだし味見とかしたいんだけどダメ?」
にっこりと笑って首を傾げられると、つい考え事を放棄してそれを受け取ってしまうあたり、骸も恋人には甘かった。
End
完全無欠なんて、誰が言ったことか。
この後一緒にパインとか送られてきたゼリーとか食べました。オチはない。
up:2012/08/17