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 久しぶりに訪れた彼の部屋。
 そこには、この世界で最上級レベルに気に食わない人間がいた。

 見間違いかと思って目元を擦り再確認したが、間違いなく本物で。

「……綱吉」
「……言いたいことは分かってるよ、骸」
「だったら早く何とかしなさい!! 何故アレが君の部屋にいる??!」
「んー、アレとは失礼ですねぇ」

 アレ――名前を口に出したくもないが、もう諦めよう――すなわちD・スペードは、台詞とは裏腹に面白がるような笑みを浮かべて僕を見た。

 意味が分からない。
 何でコイツがここにいる。
 ……まさか、僕と綱吉のお家デートを邪魔する気ですか!?

「分かりました、少し待っていてくださいね。ちょっとアレを廻らせてきますので。」
「わー!!? それはやめろ!! まだ何もしてないからこの人!」
「……僕よりアレの方がいいのですか綱吉」
「何でそうなるんだよ!」

 ……そりゃ骸の方がいいに決まってんじゃん。
 唇を尖らせて呟かれた答え。「くは」と思わず声を漏らしこっそり悶絶する。
 僕を殺す気かこの子は。

「……人前でイチャつかないでくださいよ。寂しくなるじゃないですか」
「ならさっさと指輪に帰れこの亡霊が。ジョットにでも慰めてもらいなさい」
「それができるなら今ここにいません」

 はあ、溜息をつくデイモン。
 この傲慢な男らしくもない。
 ちょっと興味がわいてきて問いかけてみる。

「何かあったのですか?」
「……ジョットが浮気したんです。」
「「はあ?」」

 僕と綱吉の疑問符が重なった。
 うわきって、……え?
 あの浮気ですか?

「いやいやプリーモに限ってそんなことしないと思うけど……」

 僕の疑問をそのまま綱吉が代弁する。
 だが、それに対しデイモンは芝居がかった動作で肩をすくめ首を振った。

「私もそう信じていました……でも、最近の彼と言ったら……!!」

 ガタンと音を立ててデイモンが立ち上がる。

「私がいくら誘っても何だかんだ理由を付けて断ったり、かと思えばGや雨月など他の守護者とは談笑したりする始末ですよ!!? 私とは事務的な必要最小限の会話しかしないというのに! これが浮気じゃなくて何だというのですか!!」
「それは……」

 確かにとうとう見限られたのかもしれませんね。
 お気の毒です。

「でしょう! それで、彼が浮気をすると言うなら、私もするべきだと思うんです。」

 ん?
 何か今おかしい台詞が聞こえた気が……

「ということで沢田綱吉とヤらせなさい!!」

 ……それが目的かああああ!!!

「なっななな何言ってるんだよ!?」
「この変態色情霊がっ今すぐ冥界に戻れというか死ね!!」
「何を今さら。とっくに死んでますよ」
「「そういうことじゃない!!」」

 一瞬でも同情した僕が馬鹿でした!
 綱吉を庇うように立ち、三叉槍を手に取る。

「んー? 邪魔をするつもりですか、六道骸」
「当然です。死人に僕の綱吉を渡すわけがないでしょう」
「ぼ、僕のって……」

 恥ずかしそうに頬を染め俯く綱吉は大変可憐で……いや、今はそれどころじゃない。
 ゆっくりと手を広げ近づいてくるデイモンに対し臨戦態勢を構えた。

「ヌフフ……私の行く手を阻むなんて馬鹿なこと、二度とできないようにしてさしあg……ヌグハッ??!」
「「!?」」

 と、そのとき。唐突にデイモンが床に突っ伏した。
 後ろに目をやると、拳と額に焔を滾らせて彼の背中を踏みつけているのは――

「プリーモ?!」
「Ciao、デーチモとその霧よ」
「な、何で貴方がここに……ぐっ……」

 ごり。
 革靴にさらに力を入れられたようで、引きつった呻き声が上がった。
 ……コレは結構痛いですね。自業自得ではありますが。

「何でだと? 愚問だな。お前がデーチモと浮気など戯言をほざいているから、止めに来てやっただけだろうが」
「……どうして、今更……もう貴方は私のことなどどうでもいいのでしょう?」
「……デイモン」

 目線をそらし不機嫌そうに唇を歪めるデイモンに、何故かジョットも悲しげな表情をして。
 それから背中を押さえつけていた足を退け、屈んで彼と視線を合わせる。
 ん? これはまさか……
 疑問を感じたときにはもう遅く。

「へ?」
「っ駄目です!! 綱吉は見てはいけません!!」

 慌てて綱吉の眼を塞いだ。
 そう、目の前の二人が濃厚すぎるベーゼを交わし始めたから。

「ん…ぅ、ふぁ……んふ…」

 ピチャ、と時折響く水音。必死で自分は何も聞いていないと暗示をかける。
 長いようで短い数分後、ようやく離れた影にうんざりとしながらも仕方なく視線を戻した。

「馬鹿……俺がお前をどうでもいいなんて、思うはずないのに……」
「だって最近の貴方といえば、私とは口も利かない癖にあいつらばかり構っていたから……私はもう捨てられたのかと思いました」
「ち、違……! 大体それはお前の方だろ!!」
「え?」
「お前がアラウディとばっかり話してたんじゃないか! で、その……嫉妬、したんだ……だから、少し距離を置けばちゃんと俺だけを見てくれるかと思って」
「ジョット……!!」

 …………。
 何だこのバカップル。
 砂を吐きそうだ。

「私が、貴方以外の人間を見ているわけがないでしょう」
「俺だってそうだ。……なあ、だから……浮気なんてするな」
「ええ、ジョット」

 ……………………。
 ピンク色のオーラを発する2人を眼の端に映しながら綱吉の方を見ると、彼もどんよりとした目でこちらを見ていた。
 どうやら彼も同じ心境らしい。
 目を合わせて頷いてから、一つ深呼吸。

「「イチャつくなら余所でやれ!!」」


End




骸ツナ→無自覚バカップル
スペジョ→あえて人前で見せつけるバカップル
だと思ってます。
でも十年後は骸ツナも平気で人前でイチャコラしたり。

up:2012/02/02

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