dolce text | ナノ



“風”になれる方法

20000Hitフリリク / 苺*11様



気づいたら日が傾いていた。
ふぅ、と息を吐いて手の甲で首筋に滲む汗を拭う。

今日はこんなものか。そう思って必殺技習得の為一人だけ別メニューの練習をこなしている俺は、休憩もそこそこに綺麗な夕日が眺望できる鉄塔広場から合宿所へと足を進めた

雷門中のグラウンドはしっかり整備されていた。皆は既に練習を終えているらしい。賑わった声のする食堂の方へ向かえば、メンバーは入ってきた俺を迎えてくれた。



「どう?必殺技できそう?」

マネージャー達から俺の分の夕飯を受け取り食堂を見渡せば、吹雪がこちらにニコニコと笑顔を向けながら手招きしていた。
たまたま空いていたその吹雪の隣に座らせてもらうことにし、トレイをテーブルに置き椅子に腰掛ける。
そして既に食べ終えていた吹雪は、食器の乗ったトレイを少し脇に寄せて俺にそう尋ねてきたのだ。

「イメージはできてるんだがな…どうもうまくいかなくて」
「あ、食べながらでいいよ」

特訓のおかげで正直空腹だった俺は、吹雪の言葉に甘える事にして箸を持ち小さく「いただきます」と唱える。
今日のメニューはどれもスタミナのつく様な和食だった。俺は蜆の味噌汁を一口流し込む。あたたかくて美味い。

「風丸くんの事だから、やっぱりスピードを使った必殺技なんだよね?」
「あぁ、そうだな。一応ドリブル技として考えてるんだ」

ちょうどよい大きさに切られたじゃがいもはよく火が通っていて、玉葱は甘い。円堂のおばさんには負けるけれど、これもかなり美味しい肉じゃがだ。
ふんわりと炊かれたご飯とよく合って、箸が進む。

「どんなイメージなの?」
「イメージ…竜巻が敵の周囲を囲んでかわす…って感じだな…」
「へぇ、完成したらすごい頼もしい技になりそうだね」

コップに半分ほど入った水を口に含んで吹雪は、感嘆の声をあげる。
そんな吹雪を横目に箸を進める俺はふと、そういえば、確か吹雪も土方と連携必殺技を習得する為に特訓していたはずだ、と思い出した。


「吹雪は土方との連携技は順調か?」
「うーん…今一つってところかな。タイミングが難しくてね…」

小柄な吹雪、体格の良い土方。二人がタイミングを合わせるのは確かに大変だろう。噛む度でんぷんの甘さが広がるご飯を咀嚼しながら考える。

吹雪は、本当にすごいやつだと思う。出会う前は『熊殺しの吹雪』だなんて耳にしたせいでまさに土方みたいな体格のヤツをイメージしていたが、実際は俺よりも一回り小柄で驚かされたものだったっけ。
それなのにチームの期待を背負っており、だからこそ今回鬼道に連携技習得の指名をされたんだろうが、その笑顔に合わないくらいの強烈なプレイは敵にしたくないほどだ。

「まぁ、吹雪ならできるさ」

必ずな、と空になった茶碗をトレイに置きながら吹雪のほうを向いて言えば、一瞬驚いたような顔をする吹雪。
そしてすぐ、ふわりとした笑みを浮かべる。あぁ、こいつが女子にモテる理由も分かるな、なんて改めて思ってしまうくらい、綺麗だ。自分も言えた義理じゃないが、吹雪は相当美人な部類に入る。

「ありがとう、風丸くん」

風丸くんも必ずできるよ、なんて言われてしまえば、俺は頑張るしかないだろ?

全て綺麗に腹に収めてしまった夕飯のトレイを俺も脇に寄せて、吹雪のほうを改めて向き直す。

以前、スピードが伸び悩んでいた俺にアドバイスをくれた事を思い出した。
こいつならまた、いい方法を教えてくれるかもしれない。だったら物は相談だ。


「なぁ、吹雪」
「何?」
「ちょっと相談なんだが…」






“風”になれる方法



「…して、こうすれば、ほら!」
「なるほどな…!」

その辺にあった紙と鉛筆を借りて、苦難している必殺技の謎を吹雪はさらりと解き明かしてくれた。
全くこいつは、サッカーの事に関しては頼もしい。因みに言っておくと、サッカー以外のことは少々どんくさい。まぁそこが吹雪のいいところと言えるだろうが。

「風丸くんだから、すぐに完成しちゃうんじゃないかな?」
「ありがとうな、吹雪」
「ねぇ……この技…完成したらさ、」

吹雪は、先程自ら書き込んだ、何の絵だか分からないようなぐるぐるとした鉛筆の線が書き込まれた紙を片手で持ち、眺めながら、いつもみたいにふわりとではなく、確信したような力強い笑みを浮かべる。

「僕と連携技、できそうだな…」

実際に見てみなきゃ分からないけれどねと続けて、まっすぐ視線をこちらに注いできた。

吹雪と連携技…悪くないな。
むしろ、是非やってみたいものだ。

「そしたら、ぜひ頼む」
「うん、楽しみにしてるよ」


アドバイスに加えてそんな事まで提案されて、俺はますます今すぐにでも練習したい、今すぐ習得してやりたいと逸る心を抑えるのが大変だった。

お陰で疲れているにも関わらずその晩はなかなか寝付けなかったのは、ここだけの話だ。












end










*****

2万打フリリクありがとうございました
苺*11様より、『風丸と吹雪で、ほのぼの合宿寮生活』でした。

まず、大変お待たせしてしまった事をお詫び申し上げます。すみませんでした。そして、今回風吹をご所望されていたらしいのですが私の力量不足で「+」にさせて頂きました…すみません><

ご飯食べてる風丸さんに吹雪が必殺技の話するだけの話になりました…。お待たせした割につまらなくて申し訳ないです…。風丸さんの必殺技は風神の舞です。風神の舞完成してる後にサンダービースト練習するという事に気づいたのは書き上げた後の話でして…時間軸違うと思っても目を瞑っていただきたいです><
ううう…本当に申し訳ございません…!書き直しはいつでも承りますので!

風丸さんとふぶきゅんの組み合わせははじめて書かせていただきましたが、非常に勉強になりました。
リクエスト、本当にありがとうございました。

苺*11様のみお持ち帰り可。


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