dolce text | ナノ



恋の溶解度

20000Hitフリリク / 愛恵様へ



*緑川が女の子→名前はリュウ















夏のあるよく晴れた日の公園。途中でコンビニに寄って買ったアイスを頬張りながら、ちょうど日陰になっている公園の隅のベンチで二人腰掛ける。

アイスの冷たさが舌の上に広がる。
私はソーダ味で、風丸はメロン味のアイスキャンディ。選んだ後に気付いたのが、たまたまお互いの髪の色のアイスを買っていたということ。
思わず顔を合わせて二人で笑った。


出かけると決まったのは今日の事で、特に何の目的も持たずに二人で街をふらついた。
『ロマンチック』とか『おしゃれ』などの単語には到底結び付かないお出かけだけど、私には風丸と二人で出かけるという事が大切で、それだけで十分だった。

「風丸、この後駅前の雑貨屋に行きたいんだけどさ…」
「じゃあ、アイス食べ終わった後に行くか」
「やったー!」


喜んだ私に、アイスをかじりながら風丸は、食べないと溶けるぞと笑みを浮かべる。
そんな彼の横顔をそっと覗いた私は、その表情に何故か胸の内がとくんと疼く。慌てて目を反らしてアイスを口に含む私、どうしてだか顔に熱が集まって来て、顔を反らした。



異性にも関わらず何かと気の合う風丸は、私の兄的存在であって、こうやって度々二人で出かける事も多かった。

だからずっとこのまま、着かず離れずの距離でいれると思っていた。



風に靡いた彼のさらさらとした毛先が不意に頬に当たって、もう殆ど残っていない溶けかけのアイスを口に含んで、私は彼の方を向いた。

予想すらしなかったその顔の距離に驚く間もなく、見詰められてその真っ直ぐな視線に射抜かれる。



そしてアイスによって冷たくなった唇に、あたたかい何かが触れた。
無防備なそこに舌で咥内をぺろりと舐めとられ、ゆっくりと離れる。

そして、ようやく状況を理解した私。


キス、されてた。



さっきとは比べものにならないくらい羞恥の色に染まってゆく顔を思わず両手で覆う。
私の知らない風丸がそこにいた。
不思議と不快を感じなかった。


生温い感触の残る唇を、人差し指でなぞって、熱を帯びたそれをきゅっと結んだ。
それでもあの感触がまだ残っていて、それが妙に心地よい。

「かぜ…まる…」
「ごめんな、急に驚かせるような事して」

俯いた私をそっと包み込む手。
いつも何気なくされている事なのに、今日はやけに心臓が煩い。


「俺、リュウの事が女の子として好きだって、今気付いた」


今までは兄妹みたいだなと思ってたんだけどな、と耳許で優しく囁かれる。


「でも、リュウが嫌だっていうなら俺はそれでいいから」



抱かれていた頭をそっと離され、彼はいつものように柔らかい笑みを私に向けた。
でも私の心は、いつもみたいに微笑み返す余裕なんか欠片もなくて、また胸の奥がきゅう、と疼いた。

いつも優しい風丸。世話焼きで潔くてかっこよくて、憧れで。そんな風丸が「大好き」だった。その「大好き」の意味を、私は今まで知らなかった。



(私も、今気付いたよ)


夏の初恋は、ソーダとメロンのアイスが混じった甘い甘い味がした。





(私も風丸が、好きなんだ)






恋の溶解度

それはまるでアイスのように、あまりにも簡単に解けてしまうものでした。












end










*****

愛恵様、2万打フリリクありがとうございました。
リクエストは『風緑♀でシュチュエーションはおまかせ』でしたが、ご期待に添えておりますでしょうか?

まず、大変お待たせしてしまった事をお詫び申し上げます。すみませんでした。
そしてスランプ気味である為、うまく文章纏まらなかった気がします…すみません!夏っぽいのと爽やかさと甘酸っぱいのを詰め込んでみました。兄妹みたいに仲の良い二人がお互い恋心に気づく…みたいなものを目指してみましたが…。実は風緑はあまり書きなれていなくて…ご期待に添えているか本当に心配です…。
もし、もっとこうして欲しい!みたいなのがございましたらお気軽にお伝え下さい!できる限りお答え致します。


リクエスト、本当にありがとうございました。

愛恵様のみお持ち帰り可。


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