dolce text | ナノ



君にベタ惚れ

20000Hitフリリク / あるあーる様へ



*緑川が女の子→名前はリュウ、ヒロトのひとつ年下の幼馴染み
*昔からお互い好き合っていた(リュウは無自覚)が、付き合ったのは最近
*いろいろ矛盾点はありますが気にしたら負けです。















一時間姿見の前で奮闘したおかげで少しは増しになった気がする。こうなるんだったらもっと興味持ってお化粧の練習しておくんだった。
まさに後悔先に立たず。
化粧といってもそれほどしつこくしている訳じゃない。きっと濃くしたら幼馴染みの彼には笑われてしまうから、あくまで自然に。
最後に目の前の鏡でにっこりと笑顔を作る。ひとつ年下の自分は、これで彼に釣り合うような彼女に見えるだろうか…。

そんな不安を抱きつつも時計を見遣れば、もう家を出発する予定時間を少し過ぎてしまっていた。
慌ててバッグを持ちお気に入りのサンダルを履いて、勢いよく外へ出る。



と、そこにひとつの影。
扉の閉まる音に気付いてこちらを向いたのは、ここにいる筈のない人物。

「やぁ、おはよう」
「…なんで、いるの…?!」

10分後に駅前の時計台で待ち合わせしていたはずのヒロトが、そう言って笑顔を向けてきた。

「なんでって、駅に着くまでにリュウの身に何かあったらと思うと心配で、つい迎えにきちゃった」

標札の前に寄りかけていた体を起こし、家の門から出た自分と真正面に向かい合うようにしてそう言った。そしてじっと頭から足の爪先までを見渡されて、口端が上がる彼の表情。

「ふふっ、可愛い…すごく可愛いよリュウ。俺の為に頑張ってくれたのかい?」
「ばか…違っ…!」

普段あまり好んで履かない膝上丈のスカートだとか、あまりやった事のないメイクだとか、いつものポニーテールでなく両脇の髪を後ろで結ぶ髪型だとか…。本当は、学校中の女子の黄色い声を集めるくらいかっこいいヒロトに釣り合う彼女になりたかったから、今日は特に頑張った。

そんな事を平気で尋ねてくる為に思わず羞恥で俯く私の手をそっと取り、指を絡めて繋がれる。

「さぁ行こうか、リュウ」

きゅっと握り返せばゆっくり駅へと歩き出す彼。そっと目を遣れば、相変わらずおしゃれな私服につい惚れ惚れしてしまう。この姿を自分と出かける為にしてきてくれたかと思うと、なんだかとても嬉しくなった。





***





二人で出掛けようと誘ったのは俺で、二つ返事で了承してくれたリュウにどこに行きたいかと問えば、「ヒロトと出かけるならどこでもいい」と何とも衝撃的な一言を口にした。
二人で出かけるのは久しぶり、付き合ってからは初めてだったので、彼女の要望を一番に聞き入れたかったのだが…。
結局、色々思考を巡らした結果、ベタだけど遊園地を選んだ。


そしてやっぱり、リュウは元気が取り柄で、朝会った時はしおらしくしていた(それはそれで可愛い)彼女も遊園地につけば歳相応に楽しそうにはしゃいでいた。
喜んでくれたみたいでよかったと息をつくのもつかの間、時計を見れば既に五時半を過ぎていた。



「楽しいと時間経つのって早いなぁ」

最後にひとつだけ何か乗ってから帰ろうと、やっぱりベタだけど観覧車を選んで二人で乗る。
向かい合う形で座り、まだ楽しさの興奮が冷めないリュウはそう言って無邪気に笑った。

「楽しんでもらえてよかったよ」
「だって遊園地とか久しぶりだし、それに…」

既に薄暗くなってきた為に街明かりが綺麗に光る。観覧車は中腹、ちょうど四分の一といった所だ。

「それに?」
「久々にヒロトと二人で遊べたし…」
「うん、俺も楽しかったよ、リュウが可愛くて」
「なっ…何言ってんの…!」

自分から乗ろうと言った絶叫系アトラクションを降りた後、暫く涙を浮かべてる姿。
リュウが怖い物苦手だと知ってて誘ったお化け屋敷に、意地を張って入ったはいいが、ずっと俺の左腕に捕まって怯える姿。
おいしそうにソフトクリームを頬張る表情。
すぐ赤くなる柔らかな頬。
たくさんの可愛いリュウが見れて、今日は本当に楽しかった。


目の前で、また頬を可愛いらしく染めて俯くリュウの隣にそっと動いて、囁く。

「リュウ、こっち向いて」

戸惑う仕種を見せたが、何かを割り切ったようにこちらに真っ直ぐ瞳を向けるリュウの顎にそっと手を添えて、重ねる唇。
いきなりの事に驚いたらしい彼女は、開いたままでとても近くにある黒い瞳をぎゅうっと閉じた。唇は触れるだけ、でもゆっくりと離す。

「リュウの彼氏になって初めてのキスだね」

低く耳許で囁けば、さらに羞恥で赤く彩る頬が艶っぽい。
薄暗い空にはちらちらと少しずつ星が瞬き始めていた。

と、いきなり胸に何かが当たってぎゅううっと後ろに回された手。リュウが俺の所に顔を埋めていた。

「…ど、どうしたのリュウ?」

いきなりのキスは嫌だったか?泣かせてしまったか?そんな心配をしたが…。

「…う、嬉しい…けど、恥ずかしいから…暫くこのままで居て…」

本日何度目かわからない爆弾発言投下に、彼女相手にいつまで理性が持つか不安になる自分。
そっと引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。

観覧車はちょうどてっぺんだった。




君にベタ惚れ


(ねぇリュウ、俺と付き合うのは不釣り合いだとかバカな事思ってない?)
(…え…?!バカって、だってヒロト…モテるじゃん…)
(リュウは可愛いよ、俺が惚れるくらいね)
(……なんでそう恥ずかしい事をさらっと…!)











end










*****

あるあーる様、2万打フリリクありがとうございました。
リクエストは『ラブラブデートで初キス』でしたが、ご期待に添えておりますでしょうか?

まず、大変お待たせしてしまった事をお詫び申し上げます。すみませんでした。
初キスなら初デートだろ!という安直な考えで書きましたすみません。そして勝手に幼馴染みでヒロトが学校トップでモテる奴、という設定まで加えてみました。あまり深く考えずに「お日さま園で一緒だった」から幼馴染み、という事にしておいて下さい。リュウちゃんは不釣り合いだと思っているけど、絶対リュウちゃんもモテてます。悪い虫はヒロトが追い払ってます。リュウちゃんがヒロトを好きだと自覚してから付き合いだしたから遅い、という設定です。説明しないと分からないような文ですみません><
素敵なリクエスト、ありがとうございました。何かご不満などございましたらお申し付け下さい。できうる限りの書き直しを致します!少しでも喜んでいただければこちらとしても嬉しい限りです。

リクエスト、本当にありがとうございました。

あるあーる様のみお持ち帰り可。


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