dolce text | ナノ
ケガの巧妙
20000Hitフリリク / 沖川様へ
それはいつものイナズマジャパンの練習中。
今日は個人の能力向上の為に、俺は豪炎寺くんと虎丸くん達と新必殺技のアイディアの提案を出し合って話し合っていた。 次はアジア予選決勝、勝てば世界。 次勝てたとして、果たして今のままで世界に通用するのかと考えれば、世界のレベルはそんな浅はかで甘いものじゃない。既にアジア予選にて何度も苦汁を味わっていたから、キック力がチーム内で最も優れている俺を含めた三人が、世界に通用する新必殺技を編み出すメンバーに選ばれた訳だ。
だから当然、彼とは反対側のゴールで練習していたのだが…。
突然鈍く大きい音が反対側のゴール付近から聞こえて、思わず三人で振り返る。 目が捕らえたのは、風丸くんが少し慌てたように駆け寄る姿と吹雪くんが困ったように苦笑いする姿、そしてその中心に盛大に転んで顔が地面についている緑川の姿だった。 「ごめん、俺少し席外すね」 二人は話を続けているよう言えば、二人とも短い了承の返事をした。
やってしまった。昔からドジっぽいのはお日さま園の皆、特に晴矢なんかに言われて身に染みていたけど、まさかイナズマジャパンの皆の前で盛大にやらかすとは…。 痛む体をゆっくり起こせば、世話焼きの風丸が大丈夫かと少し青い顔をして駆け付けてくれた。近くにいた吹雪もやってきて、二人にユニフォームや体についた砂を優しく叩かれた。心配する二人に、大丈夫だよと笑顔を装ったが、捻った左足首が痛くて思わず顔を歪める。 と、向こうで練習していた一人がこちらに駆け寄って来るのが見えた。
「すごい勢いで転んでたけど…大丈夫かい?」
まさか少し離れた所にいたヒロトにまで見られていたなんて、羞恥で赤くなる顔を俯かせる。
「ヒロト、緑川は左足首を捻って痛むそうだ。悪いが保健室へ連れてってやってくれないか?」 「ちょっと…風丸!」
俺とヒロトの関係を知る風丸は、大丈夫だと言っているのにヒロトにそんな事を頼む。 俺達の関係とは、簡単に言えば恋仲だ。世間的な目もあるし何より恥ずかしいので一応内密にはしているが、ヒロトが所構わず遠慮なしに可愛いとか好きとか発言したり抱き着いたりするものだから、恐らく皆に気付かれているだろう。
「という事で行こうか、緑川」
俺の意見も聞かずに勝手に話を進めるなと反論しようとした瞬間、体がふわ、と地面から浮く。見上げれば、優しい緑の目線に射貫かれ、そして夕日よりも鮮やかな赤い髪が近くにあり、思わずどきりと心臓が疼いた。 そのまますたすたと歩みを進めるヒロトに、俺はお姫様抱っこをされていた。
「お、降ろして!一人で歩けるし、」 「ダメ。そう言っていつもお前は無理をするからね」 「重いから…!」 「軽いよ」 「いいから!」 「よくない」
ヒロトの手中の中でどたばたと体を暴れさせて脱出を試みるが、全く動じる気配はない。
…事もなかった。暴れたせいでバランスを崩して少しよろけたヒロト、落ちるという恐怖感で咄嗟に掴んだのは、ヒロトの胸元のユニフォーム。 反射的にぎゅうっと閉じた目を開ければ、薄ら笑いをこちらに向ける彼。
ふふっと笑うヒロトに慈しみの視線を向けられ、そしてやっと気付く。
「もしかして…わざと…?」 「ごめんごめん、つい、可愛い緑川が見てみたくて」
してやられた…。 ぎゅっと掴んでいたユニフォームを慌てて離せば、そこだけうっすら皺がついている。
「…ばか!」
ただただ羞恥の熱に侵される顔と耳を隠すべく、俯きながら悪態をつくことだけで精一杯だった。
ケガの巧妙
こういう時に限っていない保健室の先生に代わって手際よく手当てをしてくれるヒロトが、捻った足首にキスを落としてきたので、思わず足が出てしまったのは二人の秘密といった所。
end
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沖川様、2万打フリリクありがとうございました。 リクエストは『ヒロトがリュウジをお姫様抱っこ』でしたが、ご期待に添えておりますかね…?
まず、大変お待たせしてしまった事をお詫び申し上げます。すみませんでした。 お姫様抱っこの為に、リュウジには盛大に転んでもらいました…笑 そして心配で駆けつけるヒロトが少し必死だったらと考えると…いいですよね^^ ヒロト達の新必殺技はもうお解りかと思いますが、グランドファイアです。あんな凄い技なんできっと韓国戦より前くらいから練習し始めてると思います。そしてリュウジと一緒にいる二人は単なる趣味です← 書いててとても楽しかったです。素敵なリクエスト、ありがとうございました。 何かご不満などございましたらお申し付け下さい。できうる限りの書き直しを致します!少しでも喜んでいただければこちらとしても嬉しい限りです。
リクエスト、本当にありがとうございました。
沖川様のみお持ち帰り可。
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