dolce text | ナノ
やきもちやき
20000Hitフリリク / あきの様へ
「円堂くん…かっこいいなぁ…」
恍惚とした表情で、少し離れた所にいる我らがイナズマジャパンのキャプテン兼ゴールキーパーを務める円堂守を眺めて、ヒロトはそう呟いた。 これは彼の日常で、それを聞く度いつも飽き飽きしているのも既に俺の日常と化している。なんせほぼ毎日のように聞かされている俺、だから普段は軽く遇って受け流すのだが…。
今日は何故か、そんな彼に苛々してしまって。
「…そんなに円堂がいいなら、俺なんかやめて円堂と付き合えば…!」
高ぶった感情が俺の口から零した言葉は、自分でもそう思うほど声の大きさだけで酷く弱々しい。
ヒロトの表情を見遣れば、驚いたように目を見開いてこちらに顔を向けていた。 自分はといえば、零れてしまいそうな涙を堪えてそんなヒロトをきっ、と睨みつける。そしてそのまま背中を向け、逃げるように走って立ち去ろうとする。
名前を呼ばれた、気がした。 だが振り返る事も足を止める事も、俺はしたくなかった。
何で、どうして。 君への想いで張り裂けそうな心は、ただただ疑問だけが浮かび上がる。
思い出すのは、彼の体温と鼓動。 ヒロトに対する「好き」が家族や友達に対する好きではなく恋だと教えてくれた彼に、同じ気持ちだと明かされて初めて抱きしめられた。その時に伝わってきた、彼が生きている証。それは俺に安心感を与えてくれる。
彼を信用していない訳ではない。でも、不安は募るばかりだった。
カーテンの閉まった暗い自室で明かりも点けずに一人、枕に顔を埋めるように汗ばんだユニフォームのままベッドに倒れ込む。 一人で怒って一人で逃げてきて、一人で泣いてる。 俺ばかみたい、と心で自嘲しても、潤みを帯びた瞳はしきりに雫を零して枕に染みを作るばかりだった。
すると、部屋のドアが叩かれる音がして、その後に俺を呼ぶ声がした。でもそれに返事をせずに黙ったまま枕に顔を埋める。
「入るよ」
そう言って入ってきたのは、今一番会いたくない人。ドアをかちゃりと閉めて俺が横たわるベッドの空いている部分に腰を下ろしたのが分かった。
「緑川、」
高い位置で結ってある髪の毛先を指先に絡めながら、酷く優しい声で呼ばれる。思わずぴくりと肩が揺れ、それを見逃さなかった彼はふっと鼻で笑った。
「ごめん、」 「…」 「不安にさせちゃってたんだね…」
静かに耳許で囁いてくるそのくすぐったいくらいに穏やかな声は、真っ暗な部屋に余計に響く。
「顔を見せてくれない?」
言いたいことがあるから、と背中をぽんと叩かれたので、体をゆっくり起こす。涙でぐちゃぐちゃになった顔を枕で隠そうとした瞬間に、頬を包み込まれて顔を強引に向けさせられた。
ふふっと柔らかく微笑まれ、瞳に何度もキスを降らせる。涙で濡れた頬を舌の先でなぞられて、擽ったくて目を細めた。 暗い部屋の中でもヒロトのぬくもりが伝わってくる。
「緑川、泣かないで」 「…だれのせいだと、思ってるんだよ…!」 「うん、ごめんね」
そう言って、いきなり強く強く抱きしめられた。
「不安にさせちゃったね。でも、俺は…緑川が一番『特別』だから…」
鳴咽の漏れる俺の背中を優しく摩ってくれるヒロトの手に、不思議な安心感を覚える。
「…ホント…に?」 「本当に。前から言ってるよね?」 「…だってヒロト…円堂の事ばっかり、」
本当は解っている。ヒロトがどんな『好き』で円堂を好いているのか。そして不安を拭ってくれた今は、俺に対する『好き』がどんなものかもしっかりと伝わってきている。
抱きしめられた手をそっと緩めて、ヒロトは俺の唇を親指でそっとなぞり、ゆっくり近付いてきた。そして唇を重ね、優しく犯す。
やきもちやき
(でもそれは、俺のせい)
end
*****
あきちゃん、2万打フリリクありがとうございました。 リクエストは『基緑で喧嘩、結局ヒロトが謝って甘々』でしたが、ご期待に添えてますか?
まず、大変お待たせしてしまった事をお詫び申し上げます。すみませんでした。 いつも仲良くして頂いてます。ありがとう!喧嘩というよりは嫉妬になってしまった…そして甘々というリクエストだったので思いっきり甘くしてやりました。円堂くんをアイドル的な意味でヒロトが好いてる設定で、それを毎日聞かされている恋人緑川。やきもち妬くのも当然ですね。笑 書いててとても楽しいリクエストでした。ありがとうございます^^ 何かご不満などございましたらお申し付け下さい、できうる限りの書き直しを致します!少しでも喜んでいただければこちらとしても嬉しい限りです。
リクエスト、本当にありがとうございました。
あきの様のみお持ち帰り可。
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