dolce text | ナノ



たまには君から

20000Hitフリリク / シャルメン様へ



君からの核心的な言葉が欲しいだなんて、俺は全く欲張りだよなと自分でも思う。それでも欲してしまうのが人間で。


「緑川、」

彼の部屋に歩み寄って、ドアをノックし名前を呼ぶ。

「入ってもいいかな?」

そう尋ねれば、ガチャリと音がして開いたドアから、ちょこんと顔を覗かせた緑川がこちらを見上げた。

「ヒロト……どうしたの?」

「恋人の部屋に訪ねて来るのに、理由が必要?」

微笑んでそう言えば、「べ、別に…」とほんのり頬が赤く染まった顔を背けつつ俺を迎え入れてくれる彼。そんな姿にふっと思わず口端をあげてしまった。



愛情表現なんて、人が皆十人十色だというのと同じように、皆それぞれ違うものだと俺は思う。だから俺は俺なりに好きな相手に愛情表現をするし、相手も相手なりのやり方でそれに答えるだろう。
自分の事だけ考えて欲しい、目に見えた愛情が欲しい。だから触れ合って抱きしめて唇を重ねて息を乱して、俺のモノだけにしたい。

そう思ってしまうのは、きみが愛しいが故の独占欲。



「好きだよ、緑川」

部屋に入れてもらってから、二人でベッドの脇に腰掛けた。微笑みを向ければ少し困惑じみた彼の耳に近づいて、そう囁いた。そんな彼はぴくりと両肩を震わせて、驚きで目を見開いた表情を向けた後直ぐに顔を背けてしまう。

「な、何だよいきなり…」

ジャージの膝の辺りをきゅっと握った彼の耳がほんのり赤みを帯びている。

「本当の事言っただけ、」

もうずっと前からそう思っていて、ただそれを具現化しただけ。何度も心の中で称え、何回も君に伝えた言葉。それの本当意味を理解してくれたのはつい最近だけれど。

俺は俯く彼の背後に回り、近付いてそっと抱きしめた。首許に鼻を沈めれば鼻を微かに擽る彼の匂い。高い位置に結ばれた薄暗い綺麗な緑の髪の先が頬を掠めて擽ったい。腕を前に回し少し力を込めて引き寄せる。

「好き、」

少し体重を預けるように背中に寄り掛かってみながらも、その反応を伺う。が、どうやら恥ずかしがりやだか何だかで俯いたまま。

なんか、それじゃつまらない。

「大好き」

前の綺麗な形をしたうなじにふぅー、と息を吹き掛けてみたり、そこに口付けを落としてみたりして、さらにそのうなじに舌を這わせてみたり、形の調った耳を甘噛みしてみたり。
それでも俯いたまま、顔を覗いてみても反らされてしまい表情を伺うことができなくて。


「ねぇ、俺の事、嫌い?」

耳許でそっと尋ねれば、突然羞恥の色に染まったその顔を向け、とても驚いたようにこちらを見た。
「なに、言って…!」
だって、俺達は今までの関係を壊してまで恋仲になり、こうして互いを求め合ったりするというのに、緑川からの決定的な言葉をまだ受け取っていなくて。

「だって緑川の気持ち、俺、まだ聞いてないから」

彼を抱きしめていた手を緩め、互いに正面を向いて話せるようにベッドに座り直す。その放った言葉を聞いた彼は、ポニーテールの先を揺らして再び俯いてしまったけれど。


「聞かせて欲しいな。じゃないと、嫌いになっちゃうよ?」

低く囁けば、彼はまたぴくりと両肩を震わせて怖ず怖ずとした様子でこちらを見上げた。そして決心したように、真っ直ぐな眼差しを向けてそのほのかに桃色を帯びた唇をそっと開く。



たまには君から

(『好き』って言って?)



顔を近付けてきた緑川は、俺の首の後ろに手を回して『その言葉』を甘く囁き、そしてその直後、唇に柔らかい感触を覚えた。直ぐに離れて行ってしまったそれは、触れただけなのに甘い甘い熱を俺の唇に遺していった。











end









*****

シャルメン様、2万打フリリクありがとうございました。
リクエストは『リュウジに「好き」と言わせたいヒロトで、最後はリュウジからキス』でしたが、ご期待に添えたのでしょうか…。

まず、大変お待たせしてしまった事をお詫び申し上げます。すみませんでした。
そしてお待たせした割には内容が…詳しくリクエスト下さったのに、何だか半分も詰め込めてない気が致します…。何かございましたらお申し付け下さい、できうる限りの書き直しを致します!
少しでも喜んでいただければこちらとしても嬉しい限りです。

リクエスト、本当にありがとうございました。

シャルメン様のみお持ち帰り可。


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