dolce text | ナノ



コンビネーション



フィールド上、ボールを取られないように両足でうまく転がしながら相手を抜き去る。駆け抜けて、そこで待ち構えていた相手チームのディフェンス数人に囲まれた。周囲を見回す。相手のゴール付近にいる味方は皆、相手選手にマークされていた。
しょうがない、そう思って後ろを見ずにボールをスパイクの踵で蹴り出す。ちょうどよいタイミングで走って上がってきたミットフィールダーの彼が、上に結い上げた髪を揺らしながらボールを受け取る。そのまま俺の脇を抜いてボールをゴールまで運ぶ。
そして今度はボールを持っている彼が相手に囲まれる。
「ヒロトっ!」
そう名前を呼ばれて彼の右側に走り、タイミングの良いパスでボールを受け取る。
そうして二人でボールをキープし続けながら運び、最後は俺の流星ブレードを放って相手ゴールの白い網を揺らした。

「やった…やったよヒロト!」

得点の合図のホイッスルが響き緑川は直ぐさま駆け寄ってきて、目を輝かせて喜んだ。

「パスのタイミング、ばっちりだったね」
「そりゃあ…あれだけ練習すれば、ヒロトの動き解っちゃうし…」
頬をほんのり赤くして少し恥じらいを見せながら、それに、と続ける。

「ヒロトと…サッカーが出来て、とても嬉しいんだ…」

恥じらいながらも顔いっぱいにへにゃりと笑顔を浮かべる緑川に、思わず自分の頬が緩むのを感じた。

「俺も、緑川とサッカーできて嬉しいよ」

さて、もう一点やってやろう。
そう言いながらフィールドの味方陣地の方へ戻り始めると、それは楽しそうに自分の隣を走る緑川がいて。

サッカーやっててよかった、

そう思いながら、次はどういうコンビネーションで相手を翻弄しようかなんて考えていた。











end









*****

2010年6月前半拍手文でした。
お互いいちいち目で確認しなくても相手の動きがわかる…なんて、まさに以心伝心です。ヒロトがリュウジの練習付き合ってたら、いつの間にかお互いの動きがわかる様になってたらいいですよね…^^
ちゃんとサッカーしてる基緑文は初めてな気がします。


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