dolce text | ナノ
素っ気ない君はネコに似ている
例えるならそう、こいつはネコだ。
「なんすか、南沢さん」
ちょうど目線の位置にある空色に近い柔らかな髪をくしゃくしゃと撫でれば、返ってくるのは素っ気ない問いかけと、不満そうに睨みを利かせる視線。 でも身長差で、こちらには上目遣いにしか見えないことを口にすれば怒るので、それは秘密だ。
「キスしていい?」 「顔近いんすけどやめてください」 「じゃあシていい?」 「人の話聞いてますか?」
素っ気ない返事と態度は照れ隠しだ。 そういいつつも大人しく頭を撫でられている倉間をそっと引き寄せて後ろから抱きしめる。 身長差でちょうどよく腕中に収まる女子の中でも一際小柄な倉間は、前に回した俺の腕にぎゅっとしがみつく様に触れてきた。 顔が見えないのが残念だが、髪の隙間から見える耳が赤くなっているのを見れば、今どんな顔をしているかくらい安易に予想がついた。
素っ気ない態度と裏腹に甘えてくる倉間は、まるでネコみたいなやつ。
「何赤くなってんだよ」 「…なってねーよ……!」 「素直じゃねーな、全く」
スカートを履いていても平気で胡坐をかいたり、口調や行動が男勝りなところがあったりと、普段のこいつからは想像もつかないこの甘えっぷりは、俺しか知らない。 まぁそんなギャップも含めて、俺は好きなわけだけれど。
「…当たり前じゃないっすか、」 「何が?」 「す、好きな人に抱きしめられて、赤くならない訳がないじゃん……」
俺の腕にぎゅうっとしがみ付きながら顔を俯かせている倉間から、確かに聞こえた言葉を脳で理解するのに少々時間を要した。 俺だって余裕がある訳じゃない。正直、こいつの前ではいつも理性を抑えるのに必死だ。頬に熱が集まっているのが自分でもわかる。
とんでもない爆弾を投下してくれる彼女を一層力を込めて抱きしめて、耳元で囁いた。
「そんな可愛い事言うと、容赦できないからな」
素っ気ない君はネコに似ている
(甘え下手なところも、気まぐれな発言も)
(まだまだ飽きそうにはない)
end
*****
南倉企画NO.2
書いてから南沢のが猫っぽい事に気がづきました
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