dolce text | ナノ
ルークが最後に嘲笑う
捧げ物 / えい子さん
*南沢×倉間♀(天性的女体)の話
我ながら、この選択はべた過ぎるだろうなと思った。
「それにしても映画館?お前べたなところ選ぶよな」 「あーもー、それくらいわかってますー!」
だってまさか、二人で行きたい場所を聞かれるだなんて。考えても思ってもいなかった。 咄嗟に思いつき口から出たのは、映画館。
制服姿でもない、ユニフォームでもジャージでもない、初めて私服で南沢さんと会うのだ。
いくら『女の子っ気がなくて男勝り』なんてよく言われる私でも、服には気を使った。 というより、南沢さんとのやり取りを浜野と速水に見られ、それを恐らく浜野あたりが神童にペラペラと喋ってくれたおかげで、神童と霧野がご丁寧に全身をコーディネート、プラスで薄く化粧まで施してくれ、それなりに女の子らしくはなった、気がする。
ファッションや化粧にはあまり興味がなかったため、事の成り行きにはまぁ目を瞑るとして、正直感謝している。
待ち合わせの時刻ちょうどに待ち合わせ場所に着けば、腕を組んで壁に軽く寄りかかり、すまし顔のその姿が見えた。
私はそんな少々ナルシストでキザな先輩のことが、認めたくないが多分、すき。 二人で行きたい場所を尋ねられた時に心臓が活発になったのも事実だし、頬の熱が上がっていくのが自分でも分かった。
それ故に変に意識してしまって、先ほどから南沢さんの顔を直視出来ずにいる。足元が浮わついているような不安定さと、何だかぎこちない感覚。
「嫌だったら来なきゃよかったじゃないですか」 「そうだな」 「じゃあ何で来たんですか?」 「お前の私服どんなのか見るため」
いつもと変わらない様子で淡々と述べられた言葉の意味を理解するのに、2、3秒はかかった。
私の私服を、見るため…?
そっと南沢さんの方を見上げれば、にやりと口端を上げてこちらを見据える視線と衝突した。 途端に恥ずかしくなってきて、全身の熱が一気に急上昇する。
奥底深くに妖しさを持つ特徴的な茶の瞳には全てを見透かされているような気がして、心臓の音がすごく煩くなった。
南沢さんが見ているだけだと言うのに、…南沢さんだからこそ、…南沢さんに見られているから。
顔を横に背ける事しか出来なかった。
あぁ、いつからこんなに好きになっていたんだろう。
すると急に耳許に気配を感じたかと思えば、低くそっと囁かれた。
「まあまあ可愛いんじゃねーの、今日」
そう言って横を通り抜けて映画館の方へと歩いていく背中に、私は思いっきり叫ぶ。
「…ま、まあまあってなんだよ!」
ルークが最後に嘲笑う
「行かねーのかよ、置いてくぞ」
背中をこちらに向けたままそう言われた。 その背中を追いかけながら、赤くなった耳や顔の火照りがはやく静まる事を願った。
正直、嬉しくてしょうがなかった。
おかげで映画の内容が全く入ってこなかったというのは、秘密である。
end
*****
ツイッターで南倉を呟いていたところ、えい子さんに捕まりました。何かネタを下されば書きますと約束したので「映画デートで南倉♀」でした。 映画見てない事に書きあがってから気づきましたすみません…!これでよろしかったら貰ってやって下さいませ。
南倉はこう…南沢先輩がさらっとデレると一気に倉間がデレちゃうイメージがあります。そんな二人が愛おしいです。 ちなみに何となく出てますが、浜速で蘭拓だったりします。蘭拓は女体化でもそうでなくても二人ともセンスよさそうなイメージです。二年生おいしいです。
title by Aコース
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