dolce text | ナノ



かっこいいあなたの
可愛い姿


20000Hitフリリク / 鹿渡さま



*砂木沼が小さくなってます
















例えば、こんな事があったらどうだろうか。

なんて事ない、自分の為に用意された部屋の扉を開けて、例えば見覚えのないものが目に付いたら。
それが例えば見覚えのない生物で、それが例えば子どもで、更に言えばその子どもは横たわっていたら。

一般的な思考を持った人間ならきっと驚き戸惑うだろう。そしてオレもその例に漏れず、どうすればいいかわからなかった。


とりあえず部屋へ入り扉を閉めて、その子どもにそうっと近づいてみる。

背中をこちらに向けて横たわっているその子は、とりあえず微かに肩が動いているのを見ると息はしている。静かな部屋に響く小さい寝息に、身体に異変があるわけでないと分かりほっと胸を撫で下ろした。

そしてよく伺えない顔を起こさないようにそっと覗いてみると、…それはまるで、そう。

(…さぎぬま、さん…?)

幼い頃から自分が兄のように慕い、そして弟のように面倒を見てもらった優しい彼、砂木沼さんの面影を感じさせられるような容貌だった。

そう、例えるなら写真で見た砂木沼さんの幼い頃と生き写し、あるいは砂木沼さんを小さくしたらきっとまさにこんな感じだろうというあくまで想像上の姿。

だがそれが、目の前ですやすやと寝息を立てて寝ているのだ。


最初は、もしかすると砂木沼さんには隠し子がいて…などと考えたが、砂木沼さんがそんな人ではない事はオレ自身が一番良く知っていた。
そして今日瞳子さんやヒロトは出払っていて、この家にいるのは砂木沼さんと自分しか居ないはずなのだ。

そうなると考えられる事はひとつ…

そんな推測を脳内で凝らしていると、目の前で寝ていた砂木沼さん似の子どもがもぞもぞと動き始め、そして目を擦りながらむくりと起きあがった。






「とりあえず、名前は?」

何をすればよいのか分からず、とりあえず居間にあったお菓子と冷蔵庫にある飲み物を適当に入れ、その子どもに出し、そして話を聞くことにした。

さすが砂木沼さん似といったところか、外見年齢的に5,6歳なのにも関わらず礼儀良く正座で「いただきます」と言ってお菓子を口に運ぶのだ。

「さぎぬまおさむです」

やはりというか、納得というか、その名前を聞いて思わず深い溜め息を漏らしてしまった。

要因は分からないが、どうやら砂木沼さんは子どもになってしまったらしい。その年上に対する敬語も妙にしっくりくるのが何よりも証拠だ。
そして話を聞いていくうちに分かったのだが、記憶も子どもの時のままらしい。


だがいくら砂木沼さんといえど、子どもなのには変わりなかった。

お菓子を手で掴んで口に運ぶ姿、コップを両手で持って飲み干す姿、食べる事に一生懸命な姿は紛れもなく子どもの動作で。
ついつい、可愛いと思い自然に自分の口が綻んでいるのが分かった。


瞳子さんの手によってきっちりと整理されている、お日さま園時代に使っていたおもちゃを2,3押入れから取り出して渡して一緒に遊べば、それでまだ少し覚束無いところのある手先で一生懸命弄る。
そのうちの1つの、やはり男の子だからブロック遊びがいいだろうと思い下ろしたブロックで、一緒に武器を作って遊んだ。

そして時計の針が四時を指す頃、遊びつかれた子どもの砂木沼さんはいかにも眠そうに首をこくり、としていた。

「眠くなっちゃった?」

尋ねれば目を擦りながら静かに首を縦に振る。そんな子ども姿の砂木沼さんを抱くようにして背中をさすって。

「たくさん遊んで疲れちゃったね」
「…うん」
「ちょっと眠ろうか」

再び縦に首を振り、そして肩に体重を預けられた。座ったまま、暫く背中をとん、とん、と優しく叩いていると、耳許から寝息が聞こえてくる。

そして起こさないようにそっと覗いてみると、やはり砂木沼さんの面影があるその可愛らしい顔で静かに規則正しい呼吸をしていた。




かっこいいあなたの可愛い姿



今まで彼は兄的存在で、自分が面倒を見てもらっていた側。さらにはお日さま園時代、自分は年下の方で誰かの面倒を見るなんて事は今までなかった。

自分の記憶では、初めて人の面倒を見た。

しかも兄として慕っている人の、だ。


今日の砂木沼さんの姿を思い出しては心を和まされるばかりで。
憧れのかっこいい砂木沼もいいけれど、たまには可愛い子どもの砂木沼さんもいいかもしれない。

子どもっていいなぁ、なんてとても感慨深い気持ちになった。


そしてこれが保育士を目指すきっかけになった、なんて事は、まだ先の、別のお話。











end










*****

鹿渡様、2万打フリリクありがとうございました。リクエストは『リュウジと、色々あって幼児化しちゃった治さんの交流(ほのぼの)』でした。

まず、大変お待たせしてしまった事をお詫び申し上げます。すみませんでした。
幼児化初挑戦でありまして、しかも対象が大人っぽくて定評のある治さんで…どうしたものかと悩んでしまいました。彼ならきっと子ども時代も大人っぽかったのではないだろうかと思い、そして緑川は将来お日さま園の先生という私の脳内設定がありまして、今回のこの騒動で先生を志したらいいななんて思い、今回は執筆させて頂きました。
治さんしゃべらな過ぎてすみません…そして寝てばかりですみません!!私個人が子ども好きでして妙に凝った描写になってしまい…。リクエストに添えているか心配です。
もしもっとこうして欲しい!みたいなのがございましたらお気軽にお伝え下さい!できる限りお応え致します。

リクエスト、本当にありがとうございました。


鹿渡様のみお持ち帰り可。


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