沈黙の中、パシャパシャと水溜りのはねる音だけが響きわたっている。
空の雲が自分の心を映し出しているかのようで溜息が出る。それならいっそこの雨のようにモヤモヤとしたこの気持ちを洗い流してくれたらいいのに。
飛び出した理由は嫉妬でも喧嘩でもない。
ただ部屋の中にいるのが耐え切れなくなっただけだ。センパイに心配して欲しかったのかもしれない。そこは未だに自分でも分からないが、とにかく外へ飛び出したかったのだ。
しばらくして雨が止んだ。
どれくらいこの場所に居たのだろう。今が何時でここが何処かすらも分からない。どうやって帰ろうか。
水溜まりには、ずぶ濡れの自分の顔と、微かな虹が映っていた。
「フラン」
甘い声で自分の名前を呼ばれた。振り返らなくてもそれが誰なのかは水溜まりを見て分かった。
ミーが水溜まりに映っていたはずの虹がセンパイによって隠されたのを見て安心したのを見抜かれたのらしく、センパイはやっぱりなと笑った。
「分かってたんですかー?」
「まぁ、なんとなく」
「もう満足ですからー」
「これ以上心配かけんなよ」
はい。と返事をする訳でも、首を縦に振ることもなくミーは自ら手を差し出した。
「センパイの手、暖かいですねー」
「ばーか。お前が冷たすぎるんだよ」
虹が見えなくなるように
(全てとは言えないけれど)
(ミーの不安は掻き消されていった)