帰り道、校門の前はいつもに増して騒がしかった。
明日はテストだからなのだろう。友達や恋人と勉強をしようとする人や、開き直って遊びに行こうなんて言っている人をたくさん見かけた。ミーは開き直っている訳ではないが、別にテストなんかに興味はない。普通に教科書を読めば分かる問題ばかりなのにあんな簡単な物ではしゃぐ人達を見て不思議に思う程だった。
「なぁ、お前は勉強しねーの?」
「センパイよりは勉強したと思いますー」
パラパラと教科書を見た程度だったが、それも大事な勉強だ。センパイなんて授業も受けていないし、教科書すら開いている所なんて見たことない。それなのに余裕で学年で1位をとってしまうのだから、努力して勉強した人に謝ってほしいぐらいだ。ミーだって大して勉強はしていないかもしれないが、授業はちゃんと受けているつもりだ。少なくともセンパイよりは。
「センパイでも難しいと思う問題ってあるんですかー?」
そう聞くと、さぁ?と疑問系でさらりと返された。
センパイは確かに頭がいいから、もし難しい問題があるのだとすれば到底ミーには解けない問題なのだろう。
短い沈黙の後に、あ。一つだけあった。と言った彼の言葉に驚いて俯いていた顔を素早く上げた。
「フランの考えてることが分かんない」
「ミーの思考、ですかー?」
確かに難しい問題かもしれない。自分ですら何を考えてたんだろうと思ってしまう。でも、そんなことを言ったらセンパイが何を考えているかなんてミーにはさっぱり分からない。
「センパイは何考えてるんですかー?」
「生意気なコーハイのこと」
外で体育やってたらいつの間にか目で追ってるし、放課後はどこに行こうかとか、デートしたいなとか考えてる。
そう言われると、ミーもセンパイのことしか考えてない気がしてきた。
「たぶんミーも堕ちたセンパイのこと考えてますー」
人のことを堕ちた堕ちたなんて言えないかもしれない。ミーだって相当重症ではないか。365日24時間想える訳ではないかもしれない。でも暇さえあればセンパイの事を考えていたのだと気付かされたのだ。
「今俺が考えてる事分かる?」
「キスしたい。でしょー?」
「正解」
誰も居ない道で2つの影が繋がった。その小さな幸せも、気持ちが通じあった嬉しさもセンパイと同じだったらいいなぁと思いながらまた彼の思考を考えてみるのだった。
「明日のテストにミーの思考について出たら、ちゃんと答えてくださいねー」
「ししっ、上等じゃん」
何よりも難しく簡単なこと
(無意識だから気付かないだけで)
(お互い考えてる事は一緒だったりする)