素直のままで

甘ったるそうなパフェを、名無しは嬉しそうに口に運んでは頬を緩ませた。

「どう?堂島さんも一口」

「いや、遠慮しておく」

底の知れない胃袋を持つ彼女にため息をつきつつ、俺は名無しがそのどデカいパフェを食べ終わるのを待った。
すっごいおいしいのに…、と彼女が残念そうに言う。

「二人でいるときは、大吾で呼べっつったろう」

名無しはスプーンを動かす手を止めて俺を見た後、しかめつらを向けだした。

「でも堂島さんは私より年上だし…」

年上とか関係ないだろう、とため息混じりに言ってやる。バニラののったスプーンをくわえたまま彼女はだって、とか、でも、とかどもり出した。

「…じゃあ、一口寄越せ。今日はそれでいい。名前で呼べない代わりに、そのパフェ一口くれよ」

「え?」

中身がぐちゃぐちゃになったパフェとスプーンを運ばない彼女を見て、自然と言葉が出てしまった。
何に痺れを切らしたのか。パフェを食べない名無しにか、それとも、

「だから、その気持ち悪いパフェを一口食わせろっつったんだ」

「さっきいらないって言ったじゃない」

「気が変わったんだよ」

「…もう、なんなのさっきから」

ざくざくと乱雑にパフェにスプーンを突き刺しては中身を掘り、文句をたらしつつも「はい」と名無しはバニラアイスとチョコレートソースがかかったフルーツの乗ったスプーンを突き付けた。
名無しのしかめっつらを盗み見しつつ、それを口に含む。甘い。うざったいくらいに甘い。思わず顔に出てしまったのか、名無しの嫌な視線が刺さるのを感じた。

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