夏の出来事

鳴りやまない蝉の鳴き声にうんざりしつつも手は止めずに、私は彼氏の跡部君と、花に水を与える仕事を黙々とこなしていた。
アスファルトに熱が篭る。ホースでまいた水が蒸発を繰り返し、生暖かい空気が足にまとわりつく。

「跡部君って、こういう庶民的な事もするんだね」

一息つき、顔を上げ額の汗を拭いながら私が言うと、跡部君は手は止めず目線だけをこちらに向けた。

「アーン?当然だ。名無しは俺を誰だと思ってるんだ」

跡部君の肌を汗が伝う。氷の帝王と称されようと、暑いものは暑いんだなぁと、熱さで怠くなった頭の中で呟く。

「なにぼーっとしてんだ。手、止まってるぞ」

不意に跡部君は顎で私の手を指したかと思うと、いきなりホースの水を私に振り掛けてきた。

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