小説 | ナノ


▼ 08


「やだもう、私の時より歓声凄いわ。エドヴァルトの人気が羨ましい」
「そうかなあ…そんな事無いと思うよ…」

ちょっとだけ頬を膨らませたがすぐに笑い出したエステルと。
泣きすぎて鼻が赤くなったエドヴァルトは、持っていた白いハンカチで自分の鼻を隠した。エステルはエドヴァルトから離れると、彼の手を再び握った。

エドヴァルトも王冠の重みをしっかりと感じながら、エステルの手を握り返す。
この重みも、責任も自分の肩に感じる。

「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。有難う、エステル」


でも、その重みは今までエステルが感じていたものと同じなのだ。
ちょっとだけバランスを崩しかけたがエステルがしっかりとエドヴァルトの手を握っていたためなんとか持ちこたえる事が出来た。


そしてエステルは、用意してもらったマント。もともとの『帝国皇帝』のマントをエドヴァルトの肩につけてあげた。自分のは似たようなデザインの、一見すると同じように見えるマントを新しく作っていた。

聖堂のドアを開けると、そこにはたくさんの民衆がエステルとエドヴァルトに手を振ったり、戴冠を祝う声や歓声が聞こえた。

二人は民衆に手を振る。
それを見ながら、エステルはエドヴァルトに耳打ちする。


「そういうことで、凱旋パレードはもう一度行うわ。
明日は、エドヴァルトと一緒にパレードするからね。」
「えー…まあ、仕方ないか」
「明日は皇帝用の衣装でするのよ?父様のものだけど、まあ体格似ているからいいかな…。」
「えっ、あの衣装…」

皇帝用の衣装は、かなりフリルだのレースだのついているものだ。
見た目は凄く動きにくいし、マントみたいにずるずる引きずるような装飾もついている。
ちなみに首が詰まっている衣装なので、エドヴァルトは表情が曇った。

「仕方ないじゃないの。私だってこれ着るのよ?この服見た目可愛いけど動きにくいし、コルセットきついのよ?」
「…そっか。じゃあ二人ともキツイ思いしながら、だね」

二人で顔を見合わせ、笑いあう。
そしてエステルはエドヴァルトにしか聞こえない声で彼に言った。


「あと、エドには一つ内緒にしていることがあるの。つい昨日わかったことだけど」
「??」
「ふふ、それは後で教えるわ」

ニコニコと笑みを絶やさないエステル。
そして戴冠式が終わった後、エステルの内緒話の内容を聞いた後。
エドヴァルトはまた嬉し涙を流すことになるのはまた別の話。


『帝国』とシェーンブルーに兼任でエステル、エドヴァルトの二人の皇帝が戴冠した。
二人は、共同統治者として国を治めることになった。

まだエステルにはやることがたくさんあるが、エドヴァルトが隣にいてくれるのなら、心強い。

エステルはそう思いながら、女性初の『皇帝』として。史上初の共同皇帝として。
名を残す事になろうと感じながら、民衆の声にこたえるのだった。



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