小説 | ナノ


▼ 06

バルト公に一通の手紙が届けられた。
宛先はゲルマニクス。オスカーである。

バルト公は一目散にエステルと、エドヴァルトを呼び出した。

エステルは執務室にいたが、エドヴァルトは日課のリハビリ代わりの散歩にいっていた。
エステルはディアナにエドヴァルトを呼んでくるようにお願いをした。


五分後、エドヴァルトが帰ってきた。
バルト公は二人に届いた手紙を見せた。


そこには、
ゲルマニクスはシレジエンの所有権を認めてくれさえすれば停戦し、バヴィエーラへの同盟破棄をする事。
ただ、同盟相手のトリアノンにバレないように密約としてほしいことが書かれてあった。

「どうされますか、陛下」
「どうする、って言われても…」
「きっと、ケーフェンヒュラー元帥の事とかイシュトヴァーンが味方についたことをゲルマニクスは知ったんじゃない?」
「たぶんね。恐れをなした、っていう意味でなのか…何か別の目的があるのかしら」

エステルは不審そうに手紙を見つめた。

「今は、バヴィエーラに集中したいから停戦…受け入れてもいいのかもね」
「受け入れるの?」

てっきり、反対すると思っていた二人は驚いた。

「一度は認めてあげる。でも、すぐに条約破棄して奪い返すわ。その間に私たちの軍をもっと強くするの。」
「…そんな悪どい…」

バルト公は思わず本音を漏らした。
エステルはあはは、と笑いながらバルト公に向き合う。

「私はシレジエンを諦めたわけではないの。でも、今はバヴィエーラを徹底的に叩くのを優先して、それが終わってからゲルマニクスと戦うわ。」
「それで、エステルはいいの?」
「とりあえず…。でも条約なんて当てにならないのよね。現に、ユーグもミゲル王も私の父との約束を破ったのよ?」
「では…」
「乗ったフリして、バヴィエーラが落ち着いたら密約の存在をトリアノンにばらす。それで同盟が崩れたらぶっ叩くのよ」

エドヴァルトは内心拍手を送りたくなった。今のエステルの表情が、彼女の父にそっくりだった。

「バルト公。私はこの条件に乗ったとして、ゲルマニクスと密約にサインしてきて欲しいの」
「私が、ですか…??」
「そう。私はバヴィエーラの方に集中するわ」

バルト公はエステルの強硬な意思に従うことにした。
一週間後、シレジエンにてゲルマニクスのオスカー将軍と密約を交わした。

表向きは戦の継続だが、二国は一旦停戦した。

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