小説 | ナノ


▼ 07

乗り込んで話をしようとしたのはいいものの…。
さっきの青年が言った通り、話だけは聞いてもらえた。でも、話し終わった瞬間に速攻で追い出された。

まあ、すんなり行くわけではないと予想していたのでどうにかして話をもう一度聞いてもらうしか方法はないと思った。

もしここで、自分に子供がいて赤子を連れて「私とこの赤子を救えるのは貴殿方だけなのです!」と言えたらある意味同情されたかもしれない。

プライドの高い彼女は、同情を誘うようなやり方はあまりしたくはなかった。とにかく根気強く話していくしかないのだ。


エステルは一人で何度も、何日もイシュトヴァーンの城へと足を運んだ。最初は門前払いされることも多かった。それでも、彼女は諦めずに何度も自分達を助けて欲しいと訴え続けた。


5ヶ月ほどたった、初夏のころ。
エステルがいつものようにイシュトヴァーンのお城へと向かう。

「今日は門番の人いないわ…。変なの。」

そうやって座り込んで待っていた。数時間くらい待っていると、ドアが開いた。

「また来たんですか、シェーンブルーの皇女様」

不思議そうな顔をして、エステルが門の前に座って待っていると声をかけられた。それは、最初の時に出てきた青年だった。

「えーっと」
「アルスラーンです。武器商人してます」
「あら、どうも。アルスラーンね。」
「そろそろ諦めません?半年近くも毎日のように来て。」
「協力してくれるまで諦めないわ。」
「…わかりました、中にどうぞ。ここは暑いですから倒れられたら困ります」

アルスラーンは、エステルに中に入るように促した。

「い、いいの?」
「とりあえず、です。また追い出されても文句言わないでくださいよ」

アルスラーンの後をついていくと、議会が開かれている部屋に通された。

シェーンブルーの会議室よりも手狭な印象だが、
重厚感のあるインテリアとどこか裏社会的な雰囲気を醸し出す男たちが座っていた。


一斉にエステルの方へと視線が集まった。

エステルは一礼して、部屋の中に入る。
アルスラーンは扉を閉め、そこに寄りかかった。
まるで、そこからエステルが逃げ出さないように。と言わんばかりであった。エステルはそのことに気づいていない。


「ごきげんよう、シェーンブルーの王様。」
「ごきげんよう、イシュトヴァーンの貴族の方。」

大柄な体格で、見た目も強そうな中年の男性。
しかも目のところに傷があっていかにも戦慣れしている風貌の男性が険しい顔でエステルに礼をする。

エステルも一瞬その人相の悪さに怯えた表情を見せた。


「何度来ても、こちらの意見は変わりませんよ。シェーンブルーの人々や貴女の先祖たちから我々は酷い扱いを受けてきました」

彼らは今までにエスターライヒ家の君主たちから受けてきたひどい仕打ちを列挙し、その代償を求めた。
難癖をつけられ、嵐のような抗議の声が部屋中から上がる。

普通の女の子であれば、ここで泣いてしまうだろう。諦めてしまうだろう。

しかし、シェーンブルーでも変わらない。
大勢にギャーギャー言われるのは、イシュトヴァーンもシェーンブルーも変わらない気がした。

エステルも何度も反論した。
感情まかせにならないよう、冷静に淡々と。
すると、一人が口を開いた。

「皇女様よ、あんた何故そこまでして援軍を求めるんだ?」

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