小説 | ナノ


▼ 02

「はあ…?!何考えているんだあの野郎…!約束が違うじゃないか!!」
「さあ…何を思ったんだかね、あのオッサン…」

オスカーはため息を吐き、ユーグは眉をひそめて腕を組んだ。

「僕の計画が台無しじゃないか…ふざけるな…!!」

今にも地団駄を踏みそうなくらい怒っているユーグ。

この戦で、シレジエンを頂いた後には完膚なきまでにエステルを叩きのめす…主にエステルを叩きのめすのはバヴィエーラに任せよう。そのくらいで戦からさっさと離脱してしまおうとする計画が台無しだ。

「ユーグ、とりあえず打開策を考えねばならぬな。」
「ああ…」
「シレジエンを奪うことを目的なのだろう?今、彼女はほぼ誰にも味方がいないだろう」
「そうだな」

ユーグは軍服のポケットから煙草とライターを出した。煙草入れから2本の煙草を出して、1本をオスカーに渡した。彼らは慣れた手つきで火をつけて煙草を吸う。

「『シレジエンを僕たちにくれたらゲルマニクスは味方してあげるよ?兵も撤退してやるよ』と言ってみれば?」
「…」

ユーグは悩んだ。
オスカーの提案は、「停戦してやろうか」とエステルに言うというものだ。ユーグとしてはあの小娘を叩きのめしたいという思いがある。

個人的に気に入らないだけなのだが…。私怨だというのも自覚している。ああ、気に入らない。

「オスカー」
「申し上げます!!ユーグ陛下!オスカー将軍!」

ユーグはオスカーに答えようと口を開いた。
が、その時に一人の将校がユーグとオスカーの元へと来た。

「イシュトヴァーンより兵が!10万人規模の軍がシェーンブルーに味方しております!!」

ユーグとオスカーの目が見開いた。
今、彼は何と言った?!

「イシュトヴァーンが…?!何故…」

エステルがイシュトヴァーンを説得したこと、イシュトヴァーン王として即位し、バヴィエーラ軍を撤退させたというのだ。

その数。十万人。
騎馬民族の彼らは、『帝国』一の陸軍の覇者とも言える。たかだか何十年かで強くしたゲルマニクスとは格段に強さが違う。

楽勝な戦いが厄介な相手が参戦してしまった。

「あの小娘…クッソ生意気な…!!」
「ユーグ!」
「うるさい…!オスカー!ああもう!イシュトヴァーンがまさか敵につくなど…!!」

オスカーが諌めたが、ユーグは虫の居所が悪いのか手当たり次第の物を蹴散らす勢いで激怒した。

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