人に泣かれるのは好きではない。それが親しい奴や好きな奴なら尚更。だけど今は泣けばいいと思う。目の前の竜に、泣いて欲しい。
「バカめ、儂が泣くわけにはいかぬだろう」
なのにそう簡単にはいかなくて。竜は決して泣こうとしない。辛そうに顔を歪めることはあっても、その瞳からは涙は溢れない。
「別に泣くことは弱さではないと思うが」
俺がそう言うと竜は泣きそうに、笑った。それから続ける。
「儂はまるで獣じゃ。泣くことさえもできぬ。儂は喰らうことしかできぬのじゃ」と
確かに血に濡れた竜はまさしく獣だと言えるだろう。それでも俺には温もりを求める童のように見えた。愛を知らぬ童。
「なぁ政宗。泣け」
「……しつこい奴よ」
竜はまた、笑った。
ポツポツと降り始めた雨がまるで竜の変わりに泣いてるようだった。
愛を知らない童
泣けばいい。苦しめばいい。お前の偽りの笑顔をみるくらいならいっそ