もし明日世界が滅びるなら最後の瞬間まで共にいよう。
そしてもし来世なるものがあるとするなら、その時もまた最後の瞬間まで共にいよう。
「つまりはずっとお前の傍にいたいということだ」
そう言って微笑む顔に偽りはなくて。この男は出会った頃には考えられないくらいに毎日愛の言葉を吐いてくる。
そしてそういう自分もいつしかこの男を受けいれるようになって、今では離れられなくなっていた。
それはまるで欠けた心の穴を埋めるように。
いや、もしかしたら埋めるどころかそれ以上に大切なものになっているのかも知れない。
今でもまだ愛だの、恋だのはわからないが、
というより何度もそれを失った自分は考えることさえできなくなってしまったが、
「儂にはお前だけ、だからな」
隣をゆるすのも。全てをさらけだせるのも。この男だからで、この先もたぶん。これからずっとこの男だけで。
「私もお前だけだ」
「ふん、知っておるわ」
男はそう言う儂に優しく笑った。その笑顔が不意に奴と重なって
『お慕いしております。政宗殿』
それでも今の自分にはその思い出は無価値でしかなかった。だって今はこいつがいるから。だから、もう
「お前は必要ないのじゃ、幸村」
「ん?何か言ったか?」
「……いや、ただな。人とは案外簡単に変われるものなのだと思うてな。のう、兼続」
言葉はいらなかった
ただ一度だけでもいいから一緒に来ないかと手を差し出して欲しかっただけ。