生きてさえいればお前に会える、なんてそんな甘い世界じゃない。儂が生きている時はお前が死ぬ時で、お前が生きている時は儂が死ぬ時。限りなく死に近いこの時代の終末にふたりが生きられる保証なんて無に等しかった。

そして天は東軍に微笑んだ。ただそれだけのこと。

「忘れてください」

そう言ったあいつの顔が頭に浮かんだ。あの時何も言葉にすることができなかった。それはあいつも同じで。
行かないで、も。愛してる、も。どんなに思ったってそれを言葉にはできなくて、自分はただ涙を堪えることしか出来なかった。

もしあいつの最後の言葉が別の言葉ならどうだったのだろう。いっそのこと「忘れないで」とそう言えばよかったのに。そうしたらお前の事など忘れてやったのに。奴が言う忘れて、ほど残酷な言葉はない。だって最後まであいつは儂のことを…
嗚呼、だけどそんなところが好きだったんだ。




愛苦しい人

だから自分は忘れてやらない。お前のこと、全部全部。




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