二週間程前から幸村の様子が可笑しい。前までは目が合う度暖かい笑みを浮かべてきていたのに、今は冷たい視線だけが注がれる。
確か最初にそうなったのは珍しくケンカもせず兼続と話していた時。視線に気付き後ろを向けば幸村がいた。その時は既に冷めた視線を向けてきていた。
「一体なんだと言うのじゃ、バカめ!」
一人になりそう悪態を吐いてみるものの余計虚しくなるばかり。
「……好き、なのに」
「へぇ、誰のことが?」
返事が返ってきたことに驚き振り向けばまた冷たい視線の幸村がいた。
「それは、その、」
「はっきり言ったらどうなんです?」
そう言ってどんどん近付いてくる幸村は恐怖以外の何者でもなかった。気付けば後ろは壁だ。
「政宗殿が好きなのは私ですか?それとも兼続殿?」
「っ何を言ってる!兼続なわけなかろう!」
「キス、していたのにですか?」
幸村は何を言っているのか。だけどその表情はいたって嘘なんかついていない。でも自分は間違っても兼続なんかとそんなことはしていない。そこでふと思い出した。確かあの日目にゴミが入ったのを取って貰ったことを。きっと幸村の角度から見たらキスしてるように見えたのだろうと。
「バカめ!勘違いも程々にせい!目にゴミが入ったのを取って貰っただけじゃ」
幸村は冷めた表情から驚いた顔に変わった。
「ですが涙目になってたじゃないですか!顔も赤く染まってました」
「目にゴミが入ったから痛かったのじゃ。顔が赤かったのは寒かったから誰でもなるじゃろう」
「……え、じゃあ私は」
「だから言っておるじゃろう。全部お主の勘違いじゃ」
今度は驚いた顔から真っ青に変わった。(表情のコロコロ変わるやつじゃ)
「申し訳ありません。こんな勘違いをしてしまって」
「もうよい。だから早くどけ」
今自分は幸村に壁に押しつけられてる状態だ。腕がいたいし何より恥ずかしい。だけど幸村から返ってきたのは違う返事で、
「それはできません。なんせ二週間程政宗殿に触れていなかったので…」
「なっ、何を!だいたいお主が最初に勘違いしたからで」
「はい。だからしっかり責任をとらせて頂きます」
次の日久しぶりに機嫌のいい幸村と腰が痛くて布団から出られなくなった政宗がいたとか。
勘違い
すき間を埋めるように求めあって。