寒い冬が続き、最近ではほぼ毎日のように雪が降っている。『孫が風邪をひかぬように』と編み物を教えてくれとガラシャに頼まれ、ついでだからと自分も幸村に作ることにした。
「政!ありがとうなのじゃ。これで孫も安心なのじゃ」
マフラーを編み終えるとガラシャは早速渡してくると走って行った。政宗はというと今さら悩んでいた。作ったはいいもののどう渡せばいいのかと。結局なかなか渡すことができぬまま編み終えてから何日かたった。
「政は何故幸村にマフラーを渡さぬのか?」
「それは…会うきかいがないだけじゃ」
「なら会いに行けばよいのじゃ!幸村もきっと喜ぶぞ」
善は急げじゃ!とガラシャに強制的に城を追い出された。
『会うきかい』なんて本当は大した問題でもなくて。ただ自分から行くのには気がひけた。だがこうなったら自棄だ。そう思い足を進めたその時、後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「政宗殿じゃないですか!こんなところで何を?」
それはまさに今自分が会いに行こうとしていた男だった。だがいつも様子は違っていて…
「お主こそ何を…!何故そんなに濡れているのじゃ?」
「これは、此処に来る途中に犬が川で溺れていたので…」
「お主は相変わらずお人好しだな。こんな寒い日に川に飛びこむなんて」
そう言うと男は困ったように笑った。それから盛大なくしゃみをした。よく見れば体も震えている。
「とりあえず儂の城へ来い。そのままでは風邪をひくぞ」
「ですが政宗殿は今から何処かへ行くのでは?」
「それはお主に会いに……」
「えっ?私に…?」
「えぇい!煩いわ、バカめ!来ないのなら置いていくぞ」
そう言って先を歩くと慌ててついてきた。今から私も政宗殿の処に行こうと思っていました、と言いながら。
「お主は本当にバカじゃ……これでもつけておれ。少しはましだろう」
渡したのはガラシャと一緒に作った赤いマフラーだった。
冬の贈り物
それは少し不格好で、暖かい。