昔から冬は嫌いだ。だって寒くて仕方ないから。雪なんて、嬉しいのは1日目だけ。そう毎日も降られては鬱陶しくも思えてくる。
「ですが私は冬も好きですよ」
「貴様はバカか?この寒さの何処を好きになれと?」
そう返すと男は少し困った様に笑った。
「私も寒いのは苦手ですが、こうして政宗殿から傍に来てくれるのはとても嬉しいです」
「っ!それは寒いからで…」
「えぇ、知ってます。それが嬉しいんです」
そう言うと男はさっきとは変わり心底嬉しそうに笑った。
「バカめ…」
こうして傍にいるのは寒いからだけじゃない。幸村だから。それを見透かされているようで悔しかったが、男の笑顔をみたらどうでもよくなった。
「なぁ、幸村。たまには寒い日も悪くはないな」
こうして素直に甘えられるから。
今自分が言える精一杯の言葉。目の前の男は驚いた顔をし、やがてさっき以上の笑顔で抱き寄せられた。やはり幸村にはお見通しか、なんて思いながらも今は素直に甘えることにした。
雪の降る日に
あなたと過ごす冬が少しだけ好きになった。