本当は愛してる




「好きだ!山犬!」
「儂は嫌いじゃ」

今日も儂に会いにきた男は義だの愛だのを語り、儂に好きだと言う。そして儂は今日もきっぱりと嫌いじゃ、と返す。

「私の何がダメだと言うのだっ!」
「全部に決まっておるだろう、バカめ」

ふんっと態とらしく鼻で笑ってやると不義だなんだと騒ぎだした。それはいつもの光景。
そして日が経つと彼は帰っていく。

「山犬!私はそろそろ……お前、泣いているのか?」
「っそんなわけ、」

慌てて左頬に触れてみるとそこは確かに濡れていた。何故か…そんなのわかってる。
―――帰って欲しくない

「どこか痛いのか?…もしや!私が帰るのが寂しいのか?ならば山犬の傍にいてやろう」
「っいい加減にせい!ふざけたことをぬかすでないわ!この儂が寂しいわけあるか…だいたい義だの愛だの儂はいらん。儂は一人でいいのじゃ…一人が…」

いいのじゃ。最後は聞こえるかもわからない声。兼続は目を見開いてこっちを見てる。こんなこと言うつもりはなかったのに…
なのに気持ちを見透かされて、奴の言葉に動揺して、まだ傍にいて欲しくて、あいつの言う“愛”が欲しくなって、でも自分は

「愛など信じるか」

そう、愛などそんなのただの戯言だ。だいたいこんな醜い儂が愛されて言い訳がない。そこまで言うと痛いくらいに強く抱きしめられた。

「いい加減にするのはお前だ、政宗。お前が私を信じようか信じないかは勝手だ。だが私は嫌いな奴の元へ毎日来るほど暇ではない。私の気持ちまでなかったことするのは義に反すると思わぬか?」
「………兼続」
「それにお前は醜くない。私はその右目さえ愛しいからな」
「ふっお主は大馬鹿者よ」

こんな儂を好きになるんだから。
そして儂はそれ以上の大馬鹿者だ。こんな奴を好きになったんだから。逆に言えばこんな奴だから好きになったんだけど
悔しいから奴の胸に埋まりいつもの様に「バカめ」と呟いた。




(いつの間にか貴方のことが必要となっていた)





(110614)
麻弥さま遅くなってすみません
兼政の甘々とのことでしたが…全く甘くなってないorz
寧ろ途中シリアスに走ってごめんなさい!
書き直して欲しかったり直して欲しい箇所があれば気軽に声をかけてください。



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