『一番はじめは一の宮 二は日光東照宮 三は讃岐の金比羅さん 四は信濃の善光寺』 春の乾いた土の上、唄と一緒に手鞠が跳ねる。陽炎ねえさまから贈られた綺麗な五色の唐鞠は、小さな蘇芳のお気に入り。 「蘇芳」 背後の声に手鞠は逃げる。 ころころ。ころころ。 蘇芳の足は地面の上。貼りついたまま動けない。 「ただいま、蘇芳。いい子にしてましたか?」 「おかえりなさいませ、藍鉄様」 指先を揃えて、丁寧にお辞儀する。藍鉄様は無作法者がお嫌い。 いつだって蘇芳は綺麗ないい子でいなくちゃならないの。 「僕がいなくてさぞ淋しかったでしょう?遅くなってすみません」 此方に近づく藍鉄様。足元の唐鞠に気付かれた。 白くて綺麗な手を伸ばし、砂まみれの鞠を拾い上げる。 「また鞠つき遊びをしていたのですか?すっかり蘇芳のお気に入りですね。陽炎に礼を言わなければ」 「はい、藍鉄様」 お利口な蘇芳に藍鉄様は満足そうに鞠を差し出された。 「はい、どうぞ」 「ありがとうございます」 「蘇芳はいい子ですね。おみやを買ってきましたよ。そろそろ中にお入りなさい」 「はい、すぐに」 藍鉄様は先に屋敷に戻られた。蘇芳もすぐに行かなければ。 でも、その前に。 ぽちゃん 「久し振りね、蘇芳。元気にしていた?」 「お久し振りです、陽炎ねえさま。蘇芳は元気です」 「そうかしら?前に会った時より少し痩せたように見えるけど…ちゃんと食べさせてもらってるのよね?心配してるのよ。こうして稽古をつける時しか貴女には会わせてもらえないし」 「…陽炎ねえさま、そろそろお稽古を始めてください。はやくしないと藍鉄様に叱られます」 「…そうね、わかったわ」 これ以上のお喋りは禁物。 蘇芳は陽炎ねえさまが好きだから、もう会えなくなるのは嫌だった。 「あ、そういえばさっき藍鉄から可愛いこなしを頂いたのよ。蘇芳にあげた鞠のお礼ですって。気に入ってくれたみたいで私も嬉しいわ」 「…ごめんなさい、鞠はお池に捨ててしまったの」 「え、どうして?」 綺麗な五色の唐鞠は、私の大のお気に入り。 だけど。 「気持ち悪かったんですもの」 彼奴が触った物なんて。 ほととぎす これだけ心願かけたとて ロリ蘇芳ちゃんを囲う藍鉄くんが書きたかっただけです。 |