「落ち着いた?」
「うん」
「よかった…じゃあ、脱いで」
「え」

少し話が逸れたけど俺の目的はまだ達成されていない。こういうところがデリカシー皆無と言われる所以かもしれないが、知ったこっちゃない。

「リン…約束は約束だろ」







はやくはやく、と急かせば唇を尖らせたリンが恨めしそうにこちらを睨んでくる。涙はとっくに止まっているものの、まだ目元はほんのりと赤く、さっきまで散々流していた涙の名残りか羞恥のせいか、晴れた日の空みたいな色の瞳はとろりと甘く潤んでいる。あー、だからさ、そんな可愛い顔で睨まれてもちっとも怖くないんだってば。むしろ逆効果。
「むぅ…さっきは真面目っぽいこと言ってたけど、本当はえっちなことしたいだけなんじゃないの?」
「そうだけど?」
「…………………レン」
「なんだよ。別に矛盾してないだろ。ありのままのリンとエロいことしたいの、俺は。たくさんリンのこと好きだから、たくさんエロいことしたい。リンも前に言ってただろ、俺のこと好きだからセックスするんだって。それと同じことだよ」
「同じ、かなあ…?」
本音半分、詭弁半分の俺の言葉に納得がいかないのか、リンは眉根を軽く寄せてちょこんと首を傾げる。幼くて柔らかな仕草がまた可愛くて、その分だけ余計にじれったくなる。
「ほらほら、早くしないともっとすごいことさせるよ」
「えっ、やっ、まって!脱ぐ!脱ぐから!」
ようやっとごねるのをやめたリンを、改めて腰かけたベッドから見上げる。
俺の手で脱がすのも悪くないけど、それはいつもやってることだし、こんな機会は滅多にないんだ。せっかくならヴェールの踊りとまではいかずとも、リンのストリップを堪能させてもらおうじゃん。



リンはしばらく逃げ道を探るようにチラチラとこちらに視線を寄越していたけど、俺の態度に踏ん切りがついたのかひとつ大きく呼吸して、パジャマのボタンに手をかける。
先程、肌蹴させてそのままになっていた胸元はひとつボタンを外しただけで、合わせ目からレースと小さなリボンに飾られた下着が覗いた。息を吐く間もなく幾つもないボタンはすべて外されて、縛めを失った薄い布がリンの華奢な肩を撫でて、細い腕をすり抜け、床に落ちる。
「っ」
現れた肌の白さにどくりと身体全体が大きく脈を打った。露出の多い仕事着で見慣れているはずなのにどうしてだろう。ほっそりとした二の腕やちいさな臍の窪みがやけに艶めかしく映って落ち着かない。
「……………リン、下も」
見惚れながら先を促す。リンは何も答えなかったけど、手はゆっくりとズボンにかかり、一瞬の逡巡のあと、思い切りをつけて膝まで下ろされた。上とお揃いの下着に包まれた小さなお尻と柔らかそうな太腿に目を奪われる。裾口から足を抜くため身動ぎするのに合わせてもぞもぞと蠢くのがいやらしい。
「……えっと、下着も、だよね?」
「もちろん。上と下お好きな方からどうぞ」
好きな女の子に情けない所は見せたくないというくだらない男の矜持で、今すぐ飛びかかりたいのを堪えて、なんとか外面上は余裕を繕って答えてみせる。俺も大概見栄っ張りだよなあ。でも、ここでがっつくのもなんだか勿体無いし。
「……ブラ、脱ぎます」
リンは可哀想なぐらい顔を真っ赤に火照らせて、両手を震わせながら背中にまわす。胸を包む小さな布地が撓んで、あとほんの少しの動作でリンの乳房が晒される…んだけど、やっぱりここを見せるのはなかなか思い切れないのか、ホックをはずしたところで固まってしまった。
「リン」
「や、待って…こ、心の準備ぐらいさせてよ」
「なんなら手伝おうか」
「え?」
ああもうだめだ!待ちきれない!男の矜持?はっ、知ったことか!
1分も保たなかった余裕はさっさと忘却の彼方に葬って、リンの肩に手を伸ばす。
するりと肩紐を抜いて、リンの両手に支えられた布地も毟り取り、脱ぎ散らかされたパジャマの上に放り投げれば、輝くほどに白い胸と小さな薄紅色が視界を掠めた。
「えっ、ちょ、や、やだ」
リンは慌てて、自分を抱くように胸の前で腕を交差させてしまった。うむむ、往生際の悪い。
「手ぇどけてよ。見えないじゃん」
「やあっ、みないでよぉ」
「リン」
低い声を出せば、びくりとリンの肩が跳ねる。
「あんまり聞き分けが悪いと……わかるよね?」
「あ…う…」
大きな瞳が涙に潤みながらこちらを見上げる。
「また俺を怒らせたくないでしょ?」
「…鬼」
「なんとでも」
小さく唸り声をあげながら、ゆっくりとリンは腕を下ろしていく。
これまで暗闇に隠されてきたリンの素肌が曝け出される。そう考えただけで口内に唾液が溜まっていき、音をたてないようにそれを嚥下した。



「……リン、綺麗」

初めて見るリンの身体はまるで花のようだった。染みの一つさえない作り物めいた(実際、作り物なんだけど)肌の下には疑似的とはいえ確かに血が通っていて、それがさあっと紅い花弁を散らしたみたいに色づいていくのが不思議なくらい綺麗で、俺が今まで知りもしなかった未知の生き物みたいにも思えた。
リンが見せるのを躊躇った胸はお世辞にも大きいとは言えないけれど、俺にはない女の子特有の緩やかな曲線を描いていて、そこが触れれば溶けてしまいそうなほどの柔らかさであることも知っていた。緊張から呼吸が深くなっているんだろうか、リンの唇から零れる息と合わせてふたつの乳房が大きく上下して、頂は周りの肌よりも僅かに濃い薄紅色でふっくりと勃っている。
「…すごく綺麗だ」
想像していたよりもずっとずっと綺麗で、可愛くて、いやらしい。


「あんまり、見ないで…っ」
「…無茶言うなよ」
こっちは瞬きする時間すら惜しいくらいだ。リンの頭の先からつま先まで、表情や仕草のひとつだって見逃したくない。
今まで想像するしかなかったリンの裸体を余すことなく焼き付けようと、身体の至る所に視線を這わせる。
「んっ…レン、ちかい」
「我慢して」
「でも…っ、レンの息が、あたって……っ」
知らずに息が荒くなっていたのか、俺の吐息一つで身体を震わせる姿に嗜虐心を駆り立てられる。
「リンは息だけで感じちゃうんだ?」
「か、感じてな…ひゃん」
否定の言葉は乳頭に息を吹きかけてやれば可愛い嬌声に上書きされた。
「隠したって意味ないでしょ。リンが敏感なことくらい、こっちはとっくに知ってるって」
「うぅ……」
言い返せずに耳まで真っ赤に染めて俯くリン……ああもうなんて可愛いんだっ!
いよいよ堪らなくなってさっきから触れたくて仕方なかった胸に手を伸ばす。
「ひゃっ…ふあああっ!」
優しく揉みあげてやればふわふわと柔らかくて、そのまま溶けてしまうのではないかと不安になるほど甘やかな手触りは、肌の白さと相まってまるで雪みたいだ。伝わる熱だけがそのイメージを裏切って、しっとりと掌を汗ばませる。
「や、あぁんっ、レン…っ」
乳輪を爪先で軽く引っ掻きながら、徐々に指を中央へと寄せていく。桃色の突起は先程よりも硬く膨らんで早く虐めて欲しいとこちらに訴えかけているようだ。
じゃあ、お望みどおりに。
「んんっ、あっ、あぁっ」
指先できゅっと摘まんでやれば、快楽に声が甘く濡れていく。
「リンの声、可愛い……おっぱいも柔らかくてすげー気持ちいいよ」
「あっ、や、ら…はずかし…っ」
「恥ずかしがることなんてないのに。すごく綺麗だよ」
心からの言葉だった。大きさなんて気にならないぐらいリンの胸は綺麗だ。
乳房が雪ならば乳頭は新雪に散った桜の花弁だろうか。本来なら共存しないはずの二つが俺の手の中で無残に散らされている。そんな想像に快感が脊髄を駆け抜ける。
昂ぶった熱に急かされるままに揉みしだけば甘いリンの声が耳朶を打ち、それがさらに俺の体温を上げていって、いつまでも手の動きを止めることができない。
「はっ…レン、むね、そんなに…やぁ、はっ、んっ、ん」
「リン、気持ちいいの?」
「ふ、ぅん…きもちいいよぉ…」
「可愛い」
素直に快感を告げる声が、悩ましげに寄せられた眉根が嬉しくて、頬と唇に擽るようなキスを落として触れる指先に力をこめる。一瞬、リンの眉間の皺が深くなったが、すぐに気持ちよさそうに睫毛を震わせた。
「あ、そんな、も、やっ…はぁ…」
指の腹で捏ねるようにして刺激していた乳頭はすっかり尖りきっていた。慰めるように口に含んで舌で優しく転がす。もう片方は指先で挟んで擦りあげた。
「れぇ、ん…むね、そんな、しちゃ、っ、せつな、い、よぉ…」
「んっ、ぷはっ…ふぅ…」
やべ、ちょっとやりすぎたか。リンの反応があんまりにも可愛いから、つい。
このままだとすぐにでも軽く達しかねないので、名残惜しかったけれど胸への愛撫を中断して、身体のラインに沿ってゆっくりと手を下降させる。
まだまだ本番はこれからなのだ。

「最後はここだね」
「…っ」
内腿を撫でさすりながら中心に顔を近づけていく。下着には愛液のシミが出来ていて、その縦長の楕円の外周を舌先でつつっとなぞれば、リンの太腿がぴくりと波打った。
「ほら、リン。はやく脱いで」
「や、だって、レンがっ、じゃまするからぁ」
「えー俺のせい?じゃあ、また手伝ってあげようか?」
「……いい。自分で、脱ぐ…から、っ、ちょっとだけ離れてて」
「ん、しかたないな」
ゆっくりと身体を離せば、リンは数度深呼吸して、最後に残った砦に手をかけた。ここを取り払えば、リンを守るものは何もない。
また焦らされるのを覚悟していたのだけれど、それは思ったよりもずっとあっけなくリンの素肌から剥がれていった。
膝まで下ろされた下着とリンの秘部を僅かに濁った無色の橋が繋いで、ぷつりと切れる。右足、そして左足がよろけながらも抜かれて、とうとう小さな布きれはリンの指先を離れ、冷たい床へと落ちていった。

「リン…」
ついにリンは俺にすべてを曝け出した。
今まで見たくて堪らなくて、でもずっと叶わずにいた俺の望みがとうとう現実のものになった。
くしゃくしゃに脱ぎ捨てられたパジャマの上、あられもない姿で佇んでいるリンに頭の芯がぼんやりと痺れて、下半身がずしりと重くなる。
「は、はずかしい…」
これほどの痴態を晒しながら恥じらう幼さも愛おしくて、ふらふらと男を誘うその場所に再び顔を寄せた。
「……リン、よく見えないよ。もっと脚広げて」
「…っ」
おずおずと両脚が開かれる。
「あぅぅぅ…」
ぎゅっと目を瞑り恥ずかしさに耐えるリンには構わず、隅々まで観察する。
「すごい…こんな風になってたんだ」
薄く生えた金色、今はまだ包皮に包まれたクリトリス、愛液に濡れそぼった陰唇の形状までひとつひとつを網膜に焼き付ける。
皮膚の裏側の粘膜の重なりは息を飲むほど生々しくて、グロテスクといえばそうかもしれないんだけど、これがリンの内側なのだと思うとドキドキした。
「レン、そんなに見ちゃ…ふあああっ!やっ、だめええええ!」
高まる想いのままそこに口づければ、リンは甘い嬌声をあげて身を捩る。
逃すまいと腰をがっちり鷲掴んで、太腿に伝った愛液を舐めあげ、焦らすように膣口を啄んでからリンの内部深くに舌を差し込んだ。
「ひああああ、んっ、ああ、やあ…っ!」
中でもぞもぞと舌を蠢かせれば、とろりと濃密な愛液が口内に流れ込んでくる。
甘くもなんともないはずのその蜜に、舌根から溶かされてしまいそうなほどの陶酔が脳へと抜け、一滴も零さないように丁寧に啜った。
「やっ、レン、まって、もっ、たてな…っ」
内部がひくひくと収縮して舌先を痺れさせる。
いつもより昇り詰めるのが早い気がする。リンもこの状況に興奮しているのかも。
疾しい想像に口の端が持ち上がる。一度イかせようとぷっくり膨らんだクリトリスを包皮ごと強く吸い上げた。
「ひっ、やっ、んんっ、はああああああああああんんっ!」
リンは大きな嬌声をあげて全身を震わせ、床に崩れ落ちる。
「はあ、はあ…っ、は」
「リン」
「っ…あ、やっ、んむっ」
愛液で濡れたままの唇で口づければ、咄嗟に顔を背けようとしたが顎を掴んで無理矢理に受け入れさせる。
「んんっ、んむ、ふっ、ん、んんんんーっ!」
リンは自分のを飲むのが嫌みたいで、いつもこうだ。自分で出したくせに嫌がるなんて…まあ、俺もフェラの後はちょっと複雑なのかな。やってもらったことないからわかんないけど。
普段ならリンを立てて我慢するところだけど、今日は俺も余裕がない。
顔をしかめて必死に逃れようともがいているリンの後頭部と首をがっちりホールドして舌を捻じ込む。
「んっ、ちゅ、ふっ、んっ、んむぅ…っ」
リンがひくりと震えるたびにフローリングに垂れた愛液が真っ赤に染まったリンの内腿やお尻と擦れてぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てる。それと競うようにわざと大げさな音を立てて貪りつくした。
「んぁ…は、あ、はあっ……もうっ、これイヤなのにっ!」
「ゴメンって。リン、立てる?」
「……ん」
のろのろと緩慢な動作で立ち上がろうとするのを脇の下に手を差し込んで助け起こす。
視界の端にリンので濡れた床が見えて、部屋の照明を反射しているそれがもったいないなあ、なんて。



リンを抱きかかえたまま、くるりと体を反転させてベッドの上に着地させる。
ベッドに対して垂直に倒れこんだからリンの脚は中途半端に宙を泳ぎ、俺の膝は床についている状態だけれど、リンの腰さえ乗っていれば問題はないだろうとリンの両脚を肩に引っ掛け、絶頂の余韻にひくつくそこに指を差し入れた。
「やあ、ああああんん…っ、やっ、レン、もう…っ、やだぁ…」
「やだ。まだ足りない」
リンの嘆願を切り捨て、根元まで入れた示指と中指でぐっぐっと奥を突く。時々、二本の指をばた足させるように動かして中を掻き混ぜれば、奥から更なる愛液が溢れ出て、指の動きを助けた。
「あ、ひゃあん、やっ、やっ…んんっ、れんっ、れぇん…っ」
喘ぎ声の隙間から懸命に俺の名を呼ぶリンが可愛い。つーかリンの全部が可愛い。
瞳を潤ませ、口の端から涎を垂らして善がる姿は普段のリンからは考え付かない淫らさだ。いつもの暗がりの向こうにこんな顔が隠れていたのだと、そしてそれを他の誰でもない俺だけが知り得たのだと思うと、なんか、もう、感動して泣きそうっつーか、色々と堪らなくなる。
昂ぶりに任せて挿れる指を増やして弄れば、リンは強すぎる快感に耐えかねるように激しく首を横に振りながら声を高くし、全身を強張らせた。
「はあああああっ!!……あんっ、もっ、や、らぁ…れん、も、あっ、あんっ!っ、もう、してよぉ…っ」
「何を?」
「そんなの、あ、っ…わかってるくせにぃ…」
当然わかってるし、俺も限界なんだけどね。でも、もう少しだけ…。
不満を押し込めるようにリンの唇に触れるだけのキスをして、収縮を繰り返すそこをぐちゃぐちゃに掻き回し、激しい抽挿を繰り返した。
「ひっ!ふぁ…あ、ああ、ああっ!」
「いいよ、あげる。もう一回リンがイったらね」
「そんなぁ…あ、あ、だめっ、ひゃあん!」
俺はどこまでも強欲らしい。せっかく叶ったシチュエーションで、リンのことを骨の髄まで味わい尽くさなきゃ気が済まない。
ねえ、リン。もっと俺にリンの気持ちいい時の顔を見せてよ。いつもどんな顔で応えてるの?どんな風に俺を求めるてるの?全部知りたいんだ。俺にリンの全部を見せて。リンの全部をちょうだい。
俺、ずっと我慢してたんだよ。だからこのぐらいの我が儘は許してくれるよね?
「っ!はああぁぁんっ、あ、あ、ああぁぁぁぁっ!!」
指先で襞を広げ、リンの感じるところを強く刺激して三度の絶頂を促す。もう片方の手でクリトリスを摘み、捻りあげればリンは今まででいちばん高く喘いで、真っ赤に火照った身体を大きく撓らせた。
「はぁ、はぁ…っ、んっ…は」
「ふふっ、気持ちよかった?」
指を引き抜いて肩の上で小刻みに痙攣している爪先を掴み、すべすべとした脹脛にキスを落とす。

「リン、もうちょっとだけ頑張って」
寝間着代わりのスウェットを下着ごとずり下げて、さっきからはちきれそうなほど熱を溜め込んだモノを取り出す。愛液でふやけた膣口に亀頭を擦り合わせれば、リンが息を飲む音が聞こえた。
「あ…レン…ま、まって…」
「ごめん、無理。できるだけ優しくするから」
絶頂を迎えたばかりの身体には過ぎる代物だとはわかっていても止められなかった。逃げを打つようにずり上がるリンの腰を抱え込み、ゆっくりとリンの中に沈めていく。
「あ、ああ、んんっぅ!」
「くっ…」
先端からじわじわと迫る快感に、気を抜けば暴発しかねないのを腹の下に力を込めて堪え、時間をかけてすべてを飲み込ませた。
「っ…はあっ、リン、挿入ったよ」
「んんっ、ふぅ、っ」
「息詰めたらダメだって。ほら…力抜いて」
「っ、はっ、ふぁ、ぁ」
眉間に寄った皺を舌先であやして、肩や背中を優しく撫でさすれば少しずつリンの身体から余分な力が抜けていく。痛いくらいに締め付けていた膣内も柔らかく解れてきて、確かめるように軽く揺すれば上がる声も甘く熱を増した。
「リンのナカ、熱い…めちゃくちゃ絡んできて…っ、はっ」
「はあっ、ん、レン……うごいて」
「え、でも、まだ…」
「いいの…レンと一緒に気持ち良くなりたいから、おねがい…」
「…………っ、ああもうっ!」
最愛の恋人にこんな風にねだられて耐えられる男がいるだろうか。いや、いない。少なくとも俺は無理。
胸にこみ上げる嬉しさと愛しさに強くリンの身体を抱きしめる。
リンが落ち着くまではゆっくりと、なるべく負担をかけないように事を進めるつもりだったが、そんな理性もリンの言葉で粉々に砕けてしまった。一度ゆっくり腰を引き、あとは本能のまま力任せに突き上げた。

「あっ、はああああんんっ!あんっ、いっ、あうっ…ああんっ!」
「はっ、リン、リン…っ」
「やっ、ん、はぁあああ!んああっ!」
何度も追い詰められ、敏感になった身体に最大限まで膨れ上がった熱量を叩きつけるのは酷なことだとわかっていても、煽られた劣情を留めることなどできず、穿つ腰の勢いは増していくばかりだ。
「は、ああぁぁんっ!んふぅ、っ…ふうぅぅんっ!」
「リン…可愛い」
強い快楽に身を捩って悶えるリンが可愛い。
火照り汗ばんだ身体を撫でまわして、薄い腹に歯を立てる。仕事に支障が出るのでキスマークはつけられないが、この程度の痕なら大して目立たないだろう。俺だけが知っている所有印。
「んっ、はあっ、レン…っ、もっと…っ!」
「ん…ここ?」
いつのまにか肩から落ちていたリンの脚を抱え直して引き寄せれば、亀頭が最奥にぶつかる感触がしてナカの締め付けが強くなる。
「あっ!やぁ、レンっ、そこ、ぉ…あ、ああっ!」
「んっ、すごい締め付け…ほらっ、子宮、好きでしょっ」
「んんぁあああ!!はああっ、すきっ、もっ、しゅご、い、っはああああああっ!」
ガツガツと打ち付けながら小さな唇に何度もキスを贈り、浅く、深く舌を絡め合う。
重ねた唇の熱を、混じり合う唾液の甘さを、君も俺と同じように感じてくれたらいい。深く繋がった部分からこの溢れる愛しさが少しでも君に伝わればいい。

「んんむっ、ぷはあっ、れ、んっ、すき、すきぃぃ…っ」
「っ…リンっ、俺も…っ、俺もすきっ」
リン、本当に大好きだよ。
リンのためならこの身体も命も声だって惜しくない。俺の全部を君にあげる。
だからリンも、俺に、俺だけに――――――――――。

「ふあ、あ、はぁあああああああああああっっ!!」
「…っ!」
いつまでもこうしていたかったけれど、もうお互いに限界だった。
何度目かわからない絶頂を迎えたリンに引きずり込まれるように最後に深く深く押し付けて、最奥に向かって熱い精を吐き出した。





「リン、大丈夫?」
「…………なんとか」
「ごめん…ちょっと、つーか、かなり強引だったよな」
事が終わって幾らかすっきりした頭で顧みれば、我ながら呆れ果てるぐらい自分本位に動いたもんだ。しつこ過ぎる快楽の嵐にぐったりとシーツの海に身体を投げ出しているリンに罪悪感が湧いてきて、少し惜しかったけれどリンのナカから自身を抜き、中途半端にはみだした身体をきちんとベッドに納まるように横たえて、布団のなるべく汚れていない部分で包んでやる。
「えー、なんというか、その、はしゃぎ過ぎました。リン可愛いし、エロいし、気持ちいいから我を忘れたというか…………なんか、ほんとにゴメン」
ひどい言い訳だ。これじゃ言わない方がマシだろ。でも事実だしなあ。
「…………ほんとう?」
「へ」
なにが?
「その、可愛いって本当かな、って……全部見ちゃったでしょ?がっかりとかしてない、よね?」
「するわけないだろ!」
何を言い出すんだ、コイツは。がっかりなんてするわけがない。
「さっきも言ったけどさ、俺、リンが好きだよ。妙に意地っ張りだったり、スイーツモンスターだったりとかそういう困ったところがあるのは知っているけど、それも含めて大好きなんだ。だから全部見れて嬉しかったし、すごく興奮した。つーか欲目なしで見てもリンは綺麗だ」
滑らかな白い肌も柔らかく膨らんだ胸も程よく肉付いた脚も本当に綺麗だった。誰が見たってきっとそう思う。絶対に見せないけど。
「好きだよ、リン。だから俺に嫌われることなんて考えないで」
どうして言葉はこんなに無力なんだろう。好きだとか愛してるだとかそんな世界中で使い尽くされた言葉でしか君への気持ちを表せないなんて。でもそれしか知らない俺は結局また馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返すしかない。こんな言葉でも俺と君にとっては大切な絆なんだ。リンにもそれは伝わっているはず。
「……リン廃」
「そうだよ、俺はリン廃なの。悪いかっ」
「ふふ、ううん。でも、そっか…よかったぁ」
「…っ」
ふにゃりと笑うリンにまた下半身が熱を持ちはじめる。ああああ今その笑顔はダメだって!また止まらなくなる!ただでさえ事後特有の気だるげな熱を纏ったリンが妙に色っぽいなーとか不謹慎なことを考えて、太腿の内側がそわそわと落ち着かないんだからっ!
「あのね、私も…かも」
俺の葛藤なんて露知らず、リンは照れた様子で言葉を紡ぐ。
「ああいう時のレンを見るの初めてだったから、いつもこんな顔してたんだなって思うと…恥ずかしかったんだけど、すごく幸せな気分になって、ここがね、きゅぅってした」
両手で胸を抑えて、はにかみながらリンは可愛く笑う。そして気づく。
ああ、そっか。明るみが照らしだしたのはリンの身体だけじゃなかったんだ。考えてみりゃ当然のことなのに言われるまで思い至らなかった。俺がリンに貰ってばっかりだと思っていたけど、リンはリンでちゃんと俺の特別を受け取ってくれてたんだな。
そう思うと嬉しくなって、俺もまた胸のあたりがきゅっとする。愛おしさのまま布団ごとリンの身体を強く強く抱きしめて、耳元で甘えるようにそっと囁く。
「また、してもいい?」
一度叶ったところで欲望が消えるわけではない。その味を知ってしまったら最後、狂おしいほどに求め続けるしかないんだ。
「………………えっと、時々なら」
小さく返る肯定に顔が綻んでいく。
どれだけ奪っても満足することはない。これから先も俺はリンを手放すことなどできないのだから。
ねえ、だからリンももっと欲しがってよ。何度だって君にあげる。

銀の盆なんかには載せきれないほどのこの愛情を。










愛は惜しみなく (3)


「じゃあ、お風呂沸かしてくるから一緒に入ろう!随分汚しちゃったし洗ってやるよ!そのまま第2ラウンドに…っ!」
「調子に乗るなっ!」
「いてっ」





愛しているからこそ我が儘にも卑屈にもなるっていうのを書きたかったんだけど…







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