いつか来る春





昨日は中学の卒業式だった。だから今日から俺は暇だった。暇だからとりあえず黄瀬の家に行った。いつもみたいに2人でDVDを見たりして。そのDVDは感動ものの映画だった。正直俺はそんな面白くなかったから映画を見るフリをしながら、その映画に夢中になっている黄瀬を見ることにした。黄瀬はかわいい。いや、かわいい系じゃなくて綺麗系か?長い睫毛、大きい目、小さくてピンク色した唇、黄瀬の全てが好きだ。
途中から黄瀬に触れたくなった。だから手を黄瀬の手に絡めれば、自然と恋人つなぎになっていた。そうしたら次はキスがしたくなった。できれば深い方で。でもそうしたら次はセックスをしたくなってしまう。実は俺達はまだセックスをしていなかった。セックスはまだ駄目だ、まだ。俺達は健全な中学生だからセックスはまだ早いと思っていた。しかしそれはもう過去の話で。中学は卒業した。…じゃあそろそろか?そろそろ黄瀬とセックスをしても良いのだろうか。

黄瀬とキスをしたことはある。でもそれ以上をしたことはない。胸を触ったこともない。黄瀬も胸を触ったら女みたいに声を上げるのだろうか、いつもそんな想像ばかりしてしまう。

「…ねー青峰っちー。」
「あ?」
「チューしていい?」
俺がどうしようかと頭を抱えて立ち止まっているのに、黄瀬はいつもそれを飛び越えてしまうから驚く。まあ唯一俺にできることはその動揺を黄瀬に見せないことで。ただのカッコつけだと言えばそれまでだが、惚れた奴にかっこ悪い所は見せたくない。

「だったらこっち向けよ。テレビばっか見てたらできねーだろ」
んー、と返事をして黄瀬からキスをした。映画は物語の最高潮で誰かが死んでいた。多分この後俺は黄瀬に怒られるんだろうなぁ、どうせ怒られるなら全部やりきった後に怒られたい。黄瀬を抱きしめてワザとテレビに顔を向けられないようにする。キスが段々深くなる。俺が望んでいた展開だ。このまま黄瀬を押し倒して、体を触って…大丈夫。今日ならいける。このままいけば…。

 
「…なに?」
「…」
まさかこう来るとは…甘い展開を期待した俺が馬鹿だった。映画では主人公が誰かの死を嘆いて大声で泣き叫んでいる。さっき死んだのは恋人だったのだろうか。泣きたいのはこっちだバカヤロー。
葬式のようにしんみりとした部屋に笑い声が高らかに響く。今の空気に不似合いなその笑い声の発信源は黄瀬だった。
「意地悪してごめんね?だって青峰っち、全然エッチしてくれないんだもん。AVとかエロ本たくさん持ってるくせに。やっぱ男じゃ勃たないのかなとか不安になっちゃうじゃん」
黄瀬はそう言ってまた笑ったが、どこか寂しそうな笑顔だった。俺は黄瀬がそんな不安を抱いていたなんて知らなかった。俺と同じでコイツもかっこつけてたのだろうか、さつきがよく男はバカだと愚痴をこぼすがそれは本当だと思った。

「おい黄瀬」
「…………」
「きーせ、無視してんじゃねぇぞコラ。」
「うっさい。バカ峰、アホ峰。俺今ブスだからこっち見んな」
「おめーは女子か。バカじゃねーの。俺はブスでもお前のこと好きだぜ?」
キッと黄瀬が俺を睨むが全く怖くない。
「黄瀬、目とじろ。チューすっぞ」
「…アンタってムードのかけらも無い人っスよね」
文句を言いながらも俺の言うことを聞く黄瀬はゆっくりと目をとじた。だから俺の顔も近づく。黄瀬の、唇ではなく頭に。

ゴンッと部屋に鈍い音が響いた。
「ッ、いったあああ!!!何するんスか!?何で俺に頭突きしたの!!?」
「あー?これでお互い様だっつーの。つかお前って石頭かよ。まじ頭いてーんだけど」
うっさい青峰っち頭空っぽのくせに、あ?関係ねーだろ!関係ある!バカ峰!、つかバカ峰ってなんだよ!散々言い争った後、結果、両者戦闘不能となりベッドにもたれかかった。ふふっと黄瀬が笑いだせば、黄瀬の笑顔がかわいくて俺も吹き出してしまう。

「ねー本当にこれからエッチすんの?」
「なんかもういーわ。疲れた」
「本当にいいの?」
「いーんだよ馬鹿」
そうっスね何か眠たくなってしたし、黄瀬はそう言って俺に寄っかかってきた。黄瀬の体温のおかげで体がポカポカして心地よい。そういえば今日はそんなに寒くなかった、春なんだなぁと一人しみじみと実感する。隣から寝息が聞こえたから、その寝息を子守歌にひとまず俺も眠ることにした。






題名:休憩


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