馴れ初めは牢屋から

オートボットとの戦争が激化してきた。だが別に苦戦しているわけではない。それどころか優位に立っている状態と言える。あちらは仲間を捕虜として捕らえられたためその奪還に精を出していると聞く。それならばこちらとしてはそれの断固死守するわけなのだが、餌としてあえて表に出し残りのオートボットを捕まえる考えが有効とされている。
私としてはどちらでも良いのだが、とりあえず拷問して奴らの居場所を突き止める、という方に賛成している。理由ならあるさ。
最近牢屋にいるオートボットたちがうるさいと噂だ。捕虜のくせにこちらを完全に舐めていると報告が入っている。これは聞捨てならない。

少し痛い目にあわないといけないようだ、と一部のディセプティコンは苛立ちを隠せないでいるようなので、私は一人で牢屋に赴くことにした。
牢屋は船の最奥部にある暗くジメジメした場所だ。衛生的に悪く、少しでも風邪を引いたものがそこにいればすぐ悪化するだろうというほどの場所だ。拷問もそこで行われるため傷口からウイルスが入り死んでいくものは後を絶たない。

牢屋に入れば先程まで騒いでいたのが嘘のように静かになる。
皆が私を見ては驚いたように声を漏らす。それもそうだ。ショックウェーブと言えばあのメガトロンのライバルとして有名であり、内勤のくせに時折前線に出ては多くのオートボットたちを屠ってきたからだ。
私自身そんなに力はいれてないつもりなのだが(実際凄い力ではある)、脆いつくりをしているのかオートボットたちはすぐ壊れるため簡単に名を上げることができた。

ひそひそとまた騒ぎ出したオートボットたちを尻目にゆっくりと歩き出す。
一つ一つ牢屋を眺めていき、噂の中心人物を探すのだが、ふと黄色いオートボットを見つけた。
頭一つ、いや二つほど小さいそれはまだ幼い。だが少年というよりも青年に近い。だがみたところまだ士官学校に通っているような幼さだ。メモリーを遡れば答えが出てきた。彼の名前はバンブルビー。オートボット士官学校にいたのだが人員不足のため駆り出されてきた若き戦士。なるほど、彼が…。

物珍しそうに眺めていたら不機嫌そうになりじっと睨み返してきた。うん、将来有望そうだ。クスリと笑うとそれを嘲笑と受け取ったのか立ち上がるのだが同じ牢屋に入っていた見知らぬ赤色のオートボットが制止しこちらに近寄る。ああ、彼が騒ぎ立てているやつか。メモリーの中にある情報と一致したためか喜ぶもそれは表に表れない。

「卑怯者め、お前らなんか時期司令官が皆殺しにしてくれるんだ。それまで甘い蜜でもすすってろ」
「…何を言うかと思えば低俗な」
「なんだと!!」
「確か、お前は先の戦闘の司令だったな。お前のせいで仲間を危険に晒した挙句、オプティマス・プライムに尻拭いさせようとしている。愚かだな」
「貴様っ!」

赤いオートボットというのは短気だ。こうして煽ってしまえば冷静もくそもない。
一応司令であったし、情報もあるだろうと考え、牢屋から出してみる。

「お前、正気か?」
「出られるものなら出てみろ」
「言ったな?」

ビークルモードになり牢屋を走るが無駄だ。逃げることなど誰もできない。

「ドリラー」

小さく名前を呼んでやると嬉しそうな機械音の後にオートボットの悲鳴。ほら、逃げることなんか出来なかった。
ドリラーに捕まっているオートボットをそのまま宙にぶらさげる。サウンドウェーブからもらった端子を取り出しては首にあるレセプタにそれを接続する。周りはただそれを見守ることしかできない。接続された愚かなオートボットは恐怖に顔を歪めやめろと暴れている。
私は普段こんなことしないため手加減というのがわからない。だがどちらが上か、わからせる必要がある。それなら手加減なんていらないだろう。









何時間経っただろうか。赤い塗装も剥げ、先程までの威勢もない。やはり口だけだったか。サウンドウェーブから貰ったウイルスで精神的に、自前の武器で肉体的に痛め付けたためかアイセンサーは虚ろな光を灯している。情報と言える情報もなく、長い拷問は終わる。少し楽しみすぎたかな。

名も知らぬオートボットを牢屋に放り込むと黄色いトランスフォーマーが殴りかかってきた。まさかあの拷問を見せつけられた後に逆らってくる奴がいるとは思わなかった。油断したとはいえこちらにはドリラーがいる。相手の拳を容易く受け止め小さく笑う。

「諦めろオートボット、宇宙はディセプティコン…いや、メガトロン様のものになるのだからな」
「諦めるはずないだろ、必ず阻止してやる」
「そうか、楽しみにしている」

バンブルビーが喋ったことに少し驚いたがすぐ理解する。まだ喉を潰されてないと。
声も体躯も幼いバンブルビーがこれからどう成長して私たちの前に現れるか、楽しみで仕方がない。だが、阻止してみせよう。必ずだ。








馴れ初めは牢屋から
(それにしても、可愛かったなバンブルビー)



‖後書き‖
ビーの口調は完全捏造


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -