「いい加減、おかゆばっか飽きたんだけど。俺様、骨になっちゃう」
「ご飯食べなかった日数と同じぐらいこういうの食べないと健康に悪いんですよ!」

もう大丈夫だって〜、とふてくされる佐助さん。あれから数日佐助さんは倒れるほどの脱水症状と栄養失調を起こしていたと言うのに驚異的な回復力で気が付いたら家中掃除しているようなありさまだった。お粥も重湯から徐々に固くし、今ではもう具だくさんでおかゆというよりおじやのようになっていた。佐助さんとの関係はあれから良好となり、気安く私を名前で呼ぶようになった。

「なまえちゃーん、魚食べたい魚」
「じゃあ、魚のほぐし身おかゆに入れておきますね」
「違う!焼き魚!」
「わがままですねえ、焼いておかゆに入れますね」
「もーお粥は勘弁!」
「心配させた罰、ですから」

信用されるようになったとは感じる。佐助さんが倒れるまでの初めの数日、彼は自分の事一切を自分でやった。水道や電化製品の使い方を独自で理解してしまったのだ。私は度肝を抜かれた。交わす言葉は私の一方的なおはよう、おやすみだけだ。同じ空間に住んでるのに明らかな分厚い壁があった。ただ、信頼はされていないとは感じる。例えば、露骨に甘えてくること。まるでどこまで近づいていいか測られているようだ。

「仕方ない、この卵焼き食べます?」
「やったね、その魚と漬物もくれてもいいんだぜ?」
「わがまま言わないでください、はい、あーん」

と、卵をつかんだ箸をずい、と差し出し、目を丸くした佐助さんを見て我に帰る。普通、男女の仲じゃない人間同士ってこんなことしないよね?そう至ると私の顔は途端に熱くなった。同じ顔と言えど間違えて彼に接するように接してしまったのだ。恥ずかしい。

「何赤くなってんのさ、なまえちゃん」

握りがゆるくなっていた私の手を佐助さんの大きな手がつつんで、ぐいと引っ張って箸が口元へと運ばれる。心臓が飛び跳ねると同時になぜか軋んだ。

「あはは、真っ赤っかだよ、なまえちゃん」

ドキッとしちゃった?とほくそ笑む佐助さん。してません!と私はご飯をかきこんだ。

「そういえばさ、毎日毎日なまえちゃんも、こんびに、だっけ?そこのご飯だよね」
「うん、ご飯作るの面倒だから」
「ふうん」

そういって、佐助さんは蓮華を口に運んですすった。



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