*夢主はTOA世界からのトリップ
夢主は本史世界、分史世界のつくりについて深く知りません。ですが、夢主の考察が入ってきますのでご注意。


私の生まれたオールドラントは預言なるものが世界を左右していた。ひとの可能性を1つに絞り、他の可能性を殺す。ルークを初め、私たちの仲間はそれを是とはしなかった。もちろん私も、である。結果としてあの世界は預言を廃し、人々を自由へと導いた。どんな人にとってもきっとこの選択はよい方向へどんな形であれ進むのだろう。そうして、生まれ変わる世界を眺めていた矢先、私は歪みに落とされ、このエレンピオスへとたどり着いた。異世界エレンピオス、この世界は不思議な場所だった。マナと呼ばれる黒匣エネルギーの使いすぎで世界の自然は荒廃、人々は滅亡の一途を辿る。オールドラントの創世歴時代を思わせた。そして、分史世界によって魂エネルギーが減少、ここでもまた人々は危機に瀕している。ずいぶんと神に見放された世界だ。
そして、ここの世界の人間の一部は神様のように世界を壊し続けている。骸殻能力者たちだ。彼らは可能性の世界である分史世界を壊し、本史世界を永らえさせている。私の世界とは真逆の選択だ。分史世界は本史世界から生まれる本史の流れからはずれた世界。つまり、本史の予定に無いことが起きた本史世界は分史世界となる、と言うことだろう。道は一つしかない。オールドラント風で言うならば、星の記憶に縛られた世界、とでも言うのだろうか?こここそ、人が感情を持つ意味がない。選ぶ権利などないのだから。
しかし、無情にも神はこの世界の人間に感情を与えた。もっと苦しめ、と嘲笑っているようだ。数多の世界を破壊し、星の数ほどの人間を殺す骸殻能力者達が一番の被害者だろう。

「クルスニク、大丈夫か?」

「・・・もう馴れたさ。心配には及ばない。」

分史世界から帰ってきたユリウス・ウィル・クルスニクは先程からこの調子である。この男の言葉ほど信用できないものは無い。平気で心とは真逆のことを言うのだ。そんな強がりなど無駄でしかないというのに。私は湯気が立つマグカップをクルスニクの目の前においてやる。

「おいおい、ホットミルクなんて俺を子供扱いしてないか。」

「さあね。けれど、コーヒーよりは落ち着くだろう。」

私はクルスニクの正面のソファーにどかりと腰かける。ちらり、とクルスニクを見やればありがとう、と小さく呟いたのちマグに口をつける。こうなるエージェントは少なくはない。例えば、愛する者が時歪の因子だったとか、掴めなかった幸せな世界だったとか、だ。大半のものは心を病ませて帰ってくるが一部は分史世界から帰還しない者もいる。それも選択だ。目の前の男は誰よりも世界を壊してきた。しがみついていたいほど幸せな世界もあったろうに、彼はひどく残酷な現実にその強い意思の宿る双眸を向け続けた。そこに彼の最愛の弟がいるから、かもしれないが。

「そこまで、壊したことを後悔する世界だったなら、いっそずっといれば良かったじゃないか。」

「・・・後悔している訳じゃないさ。ただ、」

「ただ?」

「この俺もあの世界を作れるのかって思ってな。」

そう言って、黒の革手袋に視線を落とす。

「・・・作れるさ、人の可能性は無限だ。」

ずず、と私はコーヒーを啜る。確かに人の可能性は無限である。しかし、無情にもこの世界の可能性はひとつしかない。きっとこの男だってわかっているだろう。私たちは可能性では無く、希望に賭けるしかないのだ。もしかしたら、私の、彼の望む未来がこの先にあることを。



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