私は布団の中で幸せをかみしめる。まず、今日は土曜日の朝だと言う事、そして三連休の初日だと言う事。さて、何をしようかと言っても、遊ぶ予定もなく、黙ってゲームをするしかないのだが。でも、嬉しいものは嬉しい。ベットに寝そべって携帯をいじっていると、コンコンコンと控えめなノックの音が聞こえる。私は少し不審に思って、のぞき窓を覗く。すると、そこにいたのは昨日の少年だった。背中にぞわりとした感覚が走る。あの不思議な少年はなんで私の家を知っているんだ。そうだ、居留守を決め込もう、と私はドアから少し距離をとった時、ドアの鍵がひとりでにゆっくりと解錠するのを見た。私は事態を上手く飲み込めず、呆然をしているだけだった。開くドア。そしてそこには、美しい笑みを張り付けた少年が。

「・・・やあ、ちょっといいかな?」
「・・・・・・・ええ、おはよう・・・」

噛みあわない会話。私は家の中に上がり、少年を玄関のたたきにあがらせる。一体何が起こったんだ・・・。彼はにこやかに信じられない話を始める。彼は魔法使いで、気が付いたら日本にいて、ここから出られないこと、誰も気にも留めない中私があの雑踏の中彼を見つけた事を思い出し、彼が私を頼りにここを探し、訪れたこと。そりゃあ、こんな泣く子も黙るような美少年に頼られて良い気はしないが、如何せんウソ臭すぎる。自分は魔法使いなんてそんな発言幼稚園児でさえ馬鹿にされるだろう。私は話半分といった感じで彼の話を聞く。そんな態度が見て取れたのか、困ったように信じてないね?と笑った。

「仕方ないね、・・・アクシオブラシ」

するとどうだろう、私のお気に入りの櫛が私の鞄を飛び出して彼の手のなかへと飛び込んだ。もしかしてこれは夢なんじゃないだろうか。

「はい、これで髪をとかすといい」

跳ねているよ、と私の髪を彼の白い指がつつく。私は慌てて、櫛で梳かすも耳のところでみよんと跳ねた髪は治らなかった。すると彼は笑んで杖を一振り、すると私の寝ぐせはたちまち消え去る。私は息を呑んだ。彼は口元の笑みを崩さずに私を見つめていた。その漆黒の瞳にくらりとめまいがした。

「これで信じてもらえたかな?」

私は、声にならなくてぶんぶんと首を縦に振った。すると少年は人懐こそうな笑みを浮かべて満足げに笑った。

「さっきも言ったように、僕は何故かこの街から出られないうえに、ここには知った顔は一人もいない。僕には、あの中で僕を気にとめてくれた君しか頼れる人がいないんだ。どうか、助けてほしい」

漆黒の瞳が悲しそうに細められる。記憶の中の彼は赤い目じゃなかったかと一瞬考えたがそんなことはどうでもよかった。私の心臓はこのイケメン君によってバクバクと音を激しく打ち鳴らしている。私は頼りげなく、あ、う、としか言えなかった。

「僕には、君しかいないんだ」

その一言で、私の顔はたちまち赤くなり、もう秋だと言うのに夏日に晒されたように熱くなった。私は真っ赤にした顔を俯いて、家の奥を指差し、上がってくださいとだけ口を開いた。




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