単調な音楽が鳴る。鳴ったと同時に歩きだす人々。私もそれにならって歩きだす。数ヶ月経って、少しくたびれたスーツは体にフィットしてきたし、仕事もやっとまともにこなせる様になって来た。今から、帰って、洗濯して、寝て、同じ毎日を繰り返す。心のどこかでこれで良かったのか、と誰かが問う。これで良かったんじゃない、これしかなかったんだと返すけれども、納得しないといった感じでその疑問は消えていくのだ。家にはお金がなかったし、夢を叶えるなんてできやしない。姉たちも私と同様、夢を持っていたけれど叶えられることもなく高校を卒業してすぐに就職していった。私もきっと同じように、こうやって退屈な日々を送って、普通の人と結婚して、普通の家庭を設けるのだ。それが私の予定している、平凡な#苗字##名前#の人生というもの。
交差点である人とすれ違う。その人は名前なんて分からないがその時の私には誰よりも、ヒョウ柄のけばけばしい装いをしたおばさんよりも目立っているように見えた。その人はコスプレをしているのか、裏地が綺麗な緑の黒いマント、ローブとでもいうのだろうかそのようなものを纏っていて、交差点のど真ん中で空を見上げる横顔はあまりにも美しい。この田舎町には不釣り合いだった。行き交う雑踏の中、彼は空を見上げていた顔をゆっくりとこちらへと向ける。その双眸は、緋色で、彼の容姿と相まって現実離れしていた。ふと、音が途切れていることに気がつく。信号を見れば、青緑が点滅していた。私は早足で横断歩道を渡り切る。後ろを振り向けば、彼は忽然として消えていた。一体からは、なんだったのだろうか。私は首を傾げながらさびれたアパートへ急いだ。

気がつくと僕は、マグルの街の中に居た。ホグワーツの自室にいた筈なのだ。もしかしたら、オリオンか誰かが何かをかけたのかもしれないが、かけられる前に気づくはずだし、そもそも誰もこの僕にそこまでする度胸はないだろう。僕は周りを見渡す。どうやらここは横断歩道らしく周りを見渡せばのっぺり顔の東洋人だらけで、魔法族は一人も見当たらなかった。看板を見やれば、恐らく日本語が書かれている。ここは日本のようだ。
空を見上げれば、イギリス特有のあのぐずり掛けた空は無く、からりと晴れていた。空を見上げていると一つの気配に気がつく。そちらを向けば、東洋人の女が僕を見つめている。暫くそうしていただろうか、先ほどから鳴り続けていた不愉快な音が止むと女はハッとして道路の向こう側まで渡って行った。いつまでこうしていても仕方がないと目くらまし呪文を自分にかけ、姿くらましをした。




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