ここ最近の名前は私ではなくゼフェルの元ばかりに行くのです。

それはむしろ、喜ばしいことだった。あのゼフェルにやっと打ち解けあえる仲間ができたのは心から嬉しい。しかし、いつの間にか心の奥底で嫌な感情が蠢いていることに気付いた。
以前まではお茶に誘うと必ずといってついてきたというのに今では「忙しい」「急いでる」などの言葉でうまく丸め込まれてしまっている。

彼女は女王候補だ、私で縛るようなことはしたくない。けれど…。



「名前さんなら先程ゼフェル様とお出かけになられましたよ」
「…あー、そうですか。ありがとう」

人気の少ない静かな廊下で、顔見知りのメイドに会釈をした。ついに日の曜日も会えなくなってしまった。君とは誕生日も、クリスマスも、一緒に過ごしたはずなのに。あれはすべて私の独りよがりであったのか。

もしかしたら名前は、ゼフェルのことが好きになったのかもしれない。私とは違った、年の近い男の子だ。そうだとしたら…私はちゃんと祝ってあげるしかない。仕方がないことだし、喜ばしいことなはずなのに…嫌な汗が止まらない。
ゼフェルに限らず、他の男と名前がいると考えるだけで……とても気分が悪い。

「…良い歳して、ね」

思わず口角が引きつった。ここまでにして一人の少女に惑わされて、心を掻き乱されている。額に手を当てながら落ち着きなさい、ルヴァ。そう自分に言い聞かしながら廊下を曲がったとき。視界にうつったのは名前と、ゼフェルであった。
できるならば今一番会いたくはなかった。そして私はゆっくりと目線を下に移動させる。

「こんにちは。仲がいい、ですねー」

初々しくきゅっと握られている手をみただけで、虫唾が走った。今すぐ引き離してやりたい、なんて思うのです。ああ…今日の私は、きっと私ではない誰か。

「あ、あの、ルヴァ様……」
「………」

ゼフェルは顔をカッと赤くして名前と繋いでいた手を振り払い去っていった。ゼフェルにとっては名前といい感じに二人になれて、手を握って、幸せなひと時であったに違いない。

「あの、ルヴァ様。…何だか…怒っていますか?」
「君にはそう…みえますかね」
「……はい、正直」

名前の顔に垂れる横髪を耳にかけようと手を伸ばした瞬間、肩が僅かに震えた。

「私が怖いですか?」
「だって、ルヴァ様……」
「…君はここ最近、ずっとゼフェルといますね」
「え…?」
「私はそれが、とても嫌なんです」

言葉なんて要らない、思わず目の前の彼女を抱きしめてしまおうかとしたがそのまま真っ直ぐ名前を見つめた。

「ルヴァ様……それは……や、焼きもち…ですか?」
「はは、そう捉えた方がいいですかねー」
「ルヴァ様は大人だから、嫉妬なんてするとは……あの、ごめんなさい……」

焼きもち、嫉妬。そんな可愛らしいものではない。彼女が話すのを遮って腕の中に無理やり閉じ込めた。柔らかくて、私の好きないい香りがする。

「ゼフェル様とは本当になにもなくて、私…!」
「名前」

ああ、もう良い大人を演じるのはやめてしまおう。腕の中で顔をあげた彼女の名前を呼んで、口を塞いだ。もしこんなところをゼフェルや、誰かに見られていたらとしたら私は守護聖ではいられないだろう。

「私が大人だからって、いつも余裕があるわけじゃないんですよ」


その時はまぁ、なんとかなるでしょう。




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