いい天気だからと連れ出したのは自分だ。今日は会ってからすでに手も繋いだし、何なら頬にキスもした。そして公園で寛ぎながらいつものように肩を掴んでこちらへ引き寄せようとしたが、まるで忍者のようにするりと抜け出される。ベンチの端から絶対に動かないとばかりに踏ん張っている名前に目をやると、思わず額に手を当てながら溜息を吐いた。

「……いや、もうしねぇから、アレは」

その言葉を聞いた名前は勢いよく立ち上がり何かを言いたげに口だけ動かして、冷静さを取り戻すとベンチに座り直した。しかしこの場の空気は重く嫌悪のままで、その原因もすぐに判明することだった。

「俺の中でちょっと盛り上がったんだよ…止まんねぇっていうか」
「…それで舌を入れますか、普通!」
「…あれだ、場所が悪かった。ムードが良かったらお前も反応してただろ」
「そういう問題じゃないんですが」
「朝っぱらからやることやってるヤツらもいるんだぜ?」

アリオスは少しばかり緊張の解けた名前の肩を掴み「…なんなら夜がいいか?」と勝負をかけたように囁いたが、名前はそうやすやすと頬を染めることはなく身体を押し返す。こんなに嫌がっている理由はつい先程、人通りも多い真っ昼間に無理やり深いキスをされたことに腹を立てているため。そういう行為が不快に思われるかもしれないし、それに公共の場で女王に仕える者が…ということが一歩間違えれば問題になるかもしれない。流石にアリオスも反省をしているが、どうも真意が伝わらずなかなか機嫌は治らない。

「あー、わかった、悪かった。次からは家でしかしない」

益々機嫌を損ねると面倒なのでここはあっさりと謝罪。人気が少なくなってきている公園でベンチから立ち上がり深々と礼を向ける。数秒じっくりと考えられた後、ようやく返事が返ってきた。

「……しょうがない、許すよ」
「……マジ?」

そう言った瞬間パァッとアリオスの曇っていた表情が晴れる。気がつくと名前はすっかりアリオスの腕の中に収まっていた。

「さっすが俺の選んだ女だな!愛してるぜ」

言った傍からこれだ。キスはしないものの、アリオスの調子のいい愛情表現に名前は胸板を押し退けながらも満たされる思いを感じていた。

「けど、たまには昼間に隠れてキス…そういう刺激もほしくないか?」
「ない!」
「…わかったわかった」

しぶしぶとばかりにアリオスはその場から一本下がると、名前の手をとり並んで歩行を進める。デートもそろそろ終わり、直にこの辺りも暗くなるだろう。

「帰ってからたくさんするか」

お得意のからかい口調でそんな冗談を言い、また怒られる。そんな日常が愛おしすぎて1日1日が、勿体ない。




Love is shown by the kiss


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