華やかなショーウィンドウの前で両足を揃え、ときどき腕をあげて時計を確認する。着実に進む針に目をやると一息吐いて、鞄の中から取り出した携帯電話を耳に当てた。

「ごめん!遅れる!」
「……あとどれくらい?」
「30分くらいかな〜、ちゃんとお土産も用意してるから期待して待ってて!」

調子がいいんだから、と電源ボタンを押してふたたびショーウィンドウに背中を預ける。こうして彼女に待たされることは慣れたもんだ。

ぼうっと突っ立って10分ほどが経っただろうか、目の前を横切っていた人々が慌てるようにしてはけていく様子が視界の隅にうつり、体を乗り出して空を仰ぐと嫌な色をした雨雲が広がっていた。たまたま真上には屋根が備え付けられていた為に濡れずには済むが、傘を持っていない。すっかりコンクリートの色も変わって先ほどまでにぎやかだった大通りが閑散として雨音だけがやかましく響いている。一気に気温が下がったことで手先もすっかり悴んでいた。あと20分ほど耐えればいい。

ふと、店内の様子が気になってゆっくりと振り返ってみればショーウィンドウいっぱいに光のようなものが溢れていた。最近はこういう特殊なガラスを使っているのかな、とガラスに触れるとフラッシュを焚かれたような一際明るい光に目が眩んだ。


ふたたび瞳を開けたとき、目の前に一人の女性がいた。今まで目にしたことのない、畏怖を訴えかけるような荘厳さに身が竦む。そんな私を置いて彼女はしずかに歩き出し、素直に私もそれに続いた。ここはあたたかい。それに、雨音がぴたりと止んだようだった。