※元親とギン千代



最近同じような夢を何回も何回も見るようになってからもう何日か経つ。夢とは一時的に陥るものでいつも夢の途中、これは夢の中だと理解したいた。それほど気にはしなかったがそれが毎日同じ夢が続けばそれはそれできつい。良い夢ならまだよかった。

(何故あいつなのだ、)

今まで幾度も人の命に手をかけてきた。ためらうことはあれど引き返すことなど生涯ない。しかし夢の場合は違うのだ。手をかける者はいつも決まっている。喉元に突き付ける刄の暉、嘆く女の悲鳴。泣く声。
女の名を呼べば夢の粗筋が鮮明に呼び起こされる。そして夢の最後は女が崩れ落ちる残像で終る。

(何故、)

最近、愛おしいとさえ思えるようになり、共に戦場に赴くことすら屡ある。同じ君子を慕い、同じ志を持つ者。なのに夢は何故これほどにまで残酷なのか。


「元親、出陣だ。」

俺の夢の中、殺やめられる当の者はそれを知ることなくいつもと変わらず縁側より声を発した。戦柄、心なしか生き生きしているようにも思える。それは己とて同じ。
しかし間違ってもこの女には手をかけはしない。それは確かな事で揺るぎのなき事。今はただひたすら、愛しき女を殺やめる手は己のものではないことをひたすら願い、重い腰を上げた。



夢を夢として殺す前に
(願わくばお前を護りたい、)



end


BGM:/

2008/05/12
ロジック



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