※ビルとアリス
あなたの世界を救うためなんて、嘘のような本当。
不条理な言葉の先端
「アリス、」
無の中、届くはずのないと思っていたあなたの名前。
「なあに?」
間を空けず返された返事の鮮明さに、すこし驚いた。後ろに居たのかと振り替えれば、出会ったときのままの赤黒いドレスを身にまとって、殺風景な部屋の入り口にまるで目印のように立っていた。
「‥いらしたんですか。」
「なによ、呼んでおいて。」
私がいることに気付かなかった?と、くすくすと手を口元に添えてアリスは笑った。
「あなたの心の中の歪みはどうやら消えつつあるようですね。」
もう彼女の世界は元に戻りつつあること、記憶が蘇りそれに触れたことで、少しずつ過去を受け入れようとしていることも事実。
「あなたたちのおかげよ、ありがとう。」
「‥私たちのアリス、あなたが望むなら。」
もう「アリス」と呼べるのは残りわずかなのかもしれない。わたしたちは、あなたの歪みを取りのぞくために生まれたのです。
アリスを取り巻く不安や悲しみ、歪みがなくなればこの世界は崩壊する。
(アリスがいたから、世界が輝いて見えた。)
矛盾した考えが頭の中渦巻くようになり、感情の念に任せて教えを背いたこと、少しからずと後悔もした。
ただ、今となっては、当然の結果だったのかもしれない。
アリス、あなたのために生まれた私たちだから。
「アリス」
「‥なぁに?」
「‥あなたの歪みが、いつか消え失せること、」
(たとえば、この世界を敵に回しても、)
「ずっと、祈っています。」
(歪み狂ってしまえと、)
(そうすれば、あなたから離れずに済むかもしれない。)
end
BGM:/
2007/11/08
ロジック