その手は、何を掴むためにふたつあるのか。そう問い掛けられたけれど考えたこともないからすぐに思い浮かばない。そんなことを考えだしたらキリがないじゃないか。どうして目がふたつあるのか、どうして足がふたつあるのか。そんなもの神様にでも聞けばいい。どうしてそれを俺に聞くんだ。いや、俺が答えを見出だしたとしたら、血に従うままの答えだけだ。広がる血潮が脳裏に浮かぶ、染み渡る。

「俺が知るわけないよ。」

そう吐き捨てて背を向けると後ろから小さな小さな声がした。

「それでも、兄ちゃんの手が私の手を握ってくれた感覚がまだ残っているから。」

まるで諭すようなその物言いは、今までその答えを一つしか見出だせなかった俺の単細胞な脳髄を確かに刺激した。なんとなくそれが不快だった。

たとえば俺が気紛れにお前に向けてこの手を広げたとして、今のお前はその理由をどう解釈するかな。

(なんて、わかるわけないか。おまえも、俺も。)



躊 躇 す る



end


2015/04/16

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