「先に泣くの、ずるい。」

姿を見つけても、泣かないと決めていた。一発頬をぶん殴ってやって、そして力一杯抱き締めて、それから。

あいつが空から初めて落ちた瞬間、身体が先に動いてそして続いてその感情がついてきた。彼の身体が心が傷つくのを見たくなかった。

必ず帰ってくるから。


「ごめん、僕はカガリに何もしてあげられていない。」

そういって泣きだしそうな顔はまるで子供みたいで。悔しいと揺れた声が、私の胸を締め付けた。

(そんなことない。傍にいてくれた。今だって、ちゃんと生きて帰ってきてくれた。)

そう言いたいのに、けれどその言葉はキラのこれからを縛り付けてしまうようで怖くて口にはできなかった。

「何も出来ていないのは、私の方だ。」

挿し変わる言葉は自分の無力さ。溢れだす感情がひとつ、ふたつ。堪えた分、流れ落ちるものは大粒の塊として彼の頬に伝い流れた。

「先に泣くの、ずるい。」

そう言って、涙を優しい瞳に溜めるキラの身体を思いっきり抱き締める。小さなごめん、という声が重なった。



泣 く





end

2015/04/14




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