『私にはエレンが必要。』

俺の目をまっすぐに見つめて、そう言ったミカサの顔をあまり覚えていない。それはたぶん、いつも同じ事の繰り返しだからだ。いつも俺を制する時に同じような言葉を口にする。だから半ばうんざりしていたのかもしれない。
俺の事を縛る言葉だ。
無茶はさせない。そう目が訴えているようで。



『エレン、私はあなたを愛しているの。』

「…あのなあ。おれのすることにおまえがいちいち口を出さなくていいんだよ。」

いつものように、なんでもないフリをして。いつものようにその想いを断ち切った。その言葉はいつもの繰り返し。それはおそらくこれから変わることも、消えてしまうこともないのだろう。

「…あのさ。あんまりそういうこと口にするなよな。」

「どうして。これは私の本心。」

「だから…。」


違う。この感情はミカサに押しつけるのは間違っている。それに気が付いている。
けれど、違う。俺の感情とミカサの感情は同じ言葉でも違うものだ。

いつからだろう。ミカサの言葉の、俺に向けられる言葉のひとつひとつに意志が向くようになったのは。
子供の頃の感情とは違うものが芽生えていって。今では気持ちをかき乱す。
ミカサの言葉はどれも真っすぐで、強いものだ。だからこそ、だからこそだ。

もうそういうことを思う年になったのだ。



悩 む


その姿を確認すれば、いつもと変わらない。そんな姿で目の前に立つ。当たり前のように。変わったのは、自分。自分はもう自覚している。
ずっと一緒だった距離。違いすぎる温度差。
それ故にタチが悪いと思った。



end

2015/09/28


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