「…見つけた。」
目標を視界に収めた瞬間、口許が緩んだ。灰色のガラクタの山を掻き分けて見つけた小さな子供。まるで迷子になってしまった子供みたいだ。
「こっちにおいで。」
怯えさせないように手をゆっくりと手を広げて差し出す。けれどはじめから怯えていたのだろう。広げた手を迷子の子供が取ることはなく、後退りして逃げるように立ち去っていった。
ああ、実の兄妹なのに兄の手から離れていくなんてなんて不条理なんだろうか。だけど脆い関節は少し捻ればいとも簡単に壊れるのだろう。逃げないよう腕をひっぱれば腕が取れてしまうのだろう。試しに少し首に手をかけたら骨のきしむ音を聞いた。身の危険を感じた妹は嗚咽を繰り返しながらも俺の腕に噛み付いて隙を見て逃げていったのだ。
こんなことでしか感情を表すことができなくなってしまったけれど、初めてあの子を抱き上げたあの感触。あれだけはまだこの手に残っている。この血に染まった手でも温もりを感じるのか、なあんて思った瞬間。
(あんな年から反抗するなんて、将来が楽しみだなあ。)
血に、俺に、逆らい逃げる背中が幼くて愛おしく思えた。
違うカタチで触れ合えたらなんて今更思いはしないけど、あの小さくて白い手をこの手で包みこむまでは諦めはしないと心の内で思った。
それまでは。
さぁ、追いかけっこ。
追 い 掛 け る
end
2015/04/10