俺が掴んだ手を振り払ってくれたなら、どれだけ楽だったのだろう。
交わる視線。苦痛に歪む顔なのに、どこか決意したような強い光が揺らめいていた。腕を掴んだ部分が暖かみをおびていく。それがゆるせなくて、一層強く握りしめた。考えないようにしていた、認めたくなかった。頭の中のこいつが膨らんでいくような気がして、押し寄せる理解できない感情、この腕を離してしまいたくなる。
けれど離せずにいるのも事実で。頭が混乱しているのかもしれない。

(こいつの意思に負けたくないのか、それとも違う何かがそうしているのか、)

わからずに。
わかりたくもなかった。

振 り 払 う

いっそのこと、掴んだ腕を振り払ってくれたなら、どれだけ楽だったのだろう。
血の気の引いた自分の腕と、こいつの指先を見比べながら、そんなことを考えた。


(俺はまだその統べを知らない、)




end


2015/05/04




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