捕まれた腕はぎりぎりと音を立てて、締め付けられた。苦痛で顔を歪めると、彼が小さく笑った気がした。

「…アンタが嫌いだ。」

もう何度も聞いた言葉だった。けれどいつその言葉を聞いても、頭の奥でガンとぶたれたような感覚は変わらずに。それを言う彼の表情も晴れない。それがとても苦しかった。

「それなのに…!アンタが俺の領域に入ってくる…!何度も何度も、何度も、」

苦痛に顔を歪めているのは彼の方だ。どうしてそんな顔をして言うんだ。思うことはたくさんある。けれど願う事は対照的なもので、私は彼にまだ何も満たしてあげられていない。

「…嫌いなハズなのに。アンタの顔が何度も頭をちらつく。」

私の腕を掴む力が強くこめられていく。ミシ、と骨の軋む音がした。

「なんとかしろよ、なあ。」


今は何も言葉にできない。どうしようもなく苦しい。締め付けられた腕ではなく、心が。許してほしい。それを言ってしまえば簡単なのかもしれない。けれど唇を噛み締めて、何かに耐える彼の姿を見て、口には出せなかった。

私は、彼から与えられる痛みに、ただ耐えるしか、できなかった。


受 け 入 れ る

(変わらない私への感情、)
(それでも、私はお前を受け入れたいんだ。)



end



2015/05/04



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