ふわりと、わたあめのような亜麻色の髪の少女が前を横切った。同じ年に見えた少女は小さなトモダチと楽しそうに颯爽と走り抜ける。そんな後ろ姿を目で追っていた。いつまでも。




それから10年が経って。ふたりは再び出会って、向き合った。大きく変わった背格好。けれどやわらかそうな甘栗色の髪と、瞳の奥はあの頃のままで。

「わたし、昔Nに会った記憶があるよ。」

僕の隣に座るトウコは、そう言いながら笑っていた。人より変わった髪の色、やわらかな笑顔でポケモンに微笑みかける姿が印象に残っていると言った。


「僕も。君に会ったのはもっとずっと前だった気がする。」

手のひらからこぼれるような、記憶を繋ぎ止めるように。お互いの記憶は曖昧で不確かだけれど、ふたり繋ぎ合わさるような感覚に心が震えた。
向き合う、ずっと前からお互いがお互いを意識していたということを。



焦 が れ る

(この感情は、今も昔も変わっていない。それが嬉しくて、)



end

2015/04/18




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