あー楽しい。

華金は会社の飲み会。



先輩に飲まされ良い気分。

いや、けっこうふらふらで記憶も曖昧だ。



いつの間にかみんなで外に出て三次会に行くだの行かないだの話をしていた。





ふと、視線を感じて右の方をみたら男の人が立っていた。



あれー?おかしいな。

哲くんの幻覚が見える。



へらへら手を振ってみると、ため息を1つしたあとに手を振り返された。


「どーしよー!飲みすぎて彼氏の幻覚が見えるー」


へらへら笑いながら言ってみる。


「えー!なまえ先輩の彼氏めちゃかっこいいじゃないですか!」


同じように飲みすぎた後輩はテンション高めにそう返した。



おー、この後輩にも見えるのか。








…ん?それは、おかしい。



だんだんと近付いてくるその幻覚は何度目を擦っても消えない。



「て、てつ、くん?」


「なまえ、飲みすぎだ」


「なんでここに?」


頭に?マークをたくさん浮かべていると、仲がいい先輩が近づいてきた。


「あ、彼氏さん?ごめんね、この子飲ませすぎちゃったの。連れて帰ってもらえるかな?」


「はい。ご迷惑おかけしました」


「え、え、えー?!」


「よろしくね」


「先輩なんで!?」


「あんたが哲くん哲くんって言うから呼んであげたのよ」


「言ってないです!」


「もー覚えてないのー?はい、酔っぱらいは彼氏と帰りなさーい!」




そんな!飲ませたの先輩たちなのに!なんて思っても、理不尽なこの状況になにも言えず、会社の仲間たちはあたしと哲くんを置いて行ってしまった。



沈黙の間の空気が重い。


酔いも冷めてきた気がする。

いや、気のせいだった。



「なまえ、大丈夫か?」


「だ、大丈夫じゃないかも」


歩こうとするとふらふらしてしまい哲くんに寄りかかる。


「しょうがないな」



そういって哲くんは背中を向けてしゃがんだ。


どうやらおんぶをしてくれるらしい。


人目なんて気にせずに気遣ってくれるのが嬉しい。



頭には謝罪の言葉がぐるぐるまわっている。


「迷惑かけてごめんね」


耳元でそう囁いてみる。


「迷惑なんかじゃない」


顔は見えないけど、その言葉に安心する。



「ただ、」


「な、に…?」


「なまえから電話がきたと思ったら、男の人だったから…焦った」


「ご、ごめん。上司が悪ノリしたのかも」


「あんまり飲みすぎるなよ。心配だ」


「うん。ごめんなさい」



そこからは会話もなく、哲くんはゆっくりと歩いた。


向かっている先は彼の家だろう。



空を見上げると月がついてきている。


哲くんも空を見上げた。


「綺麗な満月だな」


「うん。きれい」




まんまるな月はわたし達を優しく照らしてくれた。




END



―*―*―*―
お迎え哲さん(^^)


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