倉持洋一
*社会人カップル




会社の飲み会の後、そのまま洋一の家に行く予定だった、が。


毎日残業だった1週間の疲れと飲みすぎたのとが重なり、電車で爆睡してしまった。

しかも終電。

しかも終点。


ついさっきまで東京にいたのに、目が覚めた時には千葉にいた。





どうしよう。

とりあえず洋一に連絡して今日は行けないことを伝えよう。

漫喫とか探してそこに避難しよう。


「も、もしもし?」

「おー、おつかれ。今どこにいんだよ?もうつく?」

「え、えっとですね…」

「あ?」

「ち、ち、千葉…?」

「は?千葉!?お前何してんの?」

「ごめん!めっちゃ爆睡してしまいました」

「バカ!どーすんだよ」

「あ、漫喫探そうかななんて…。あ、洋一の実家に行こうかな!行ったことないけど!あははは…」

「駅で待ってろ」

「え?」

「今から車で行くから待ってろっつってんだよ」

「いいよ!遠いじゃん!あたしなら大丈夫だから…」

「うるせぇ!バカ!」


ブチっ、プープープーっ…



バカバカって…いや、バカなのは充分承知してますけど。







改札を出たところにあるベンチに座ってひたすら待つこと30分。

意外に早く来てくれた。

たぶん普通なら1時間ぐらいかかるよね?

めっちゃ飛ばした?




助手席のドアを恐る恐る開ける。

「すいませんでした…」

「ったく」

お詫びの印のあったかい缶コーヒーを渡す。


「寒くねぇ?」

「あ、ちょっと寒かった」

暖房を入れてくれ、車はゆっくりと走り出した。

「ありがとうね」

「おー」

「なんでそんなに優しいの?」

「あ?いつも優しいだろうが」

「そ、そうだっけ?いや、そうだけど!だって遠いのに」

「遠くねぇよ。実家帰るときと一緒の道だし」

「だってこんな時間だし」

「お前と会って変わったんだ」

「え?」

「それほどなまえは特別ってことだ、ばーか」

照れて笑っている顔を見てきゅんとする。


「洋一…ありがと」

「明日の飯はなまえのおごりだからな」

「なんでもおごらせていただきます」

「あー眠ぃ」

「ごめ…」

「ヒャハハ、ばーか。眠いのはなまえだろ?寝てろよ」

「寝ないよ!目も覚めたし…」

「んな眠そうな顔して何言ってんだよ。疲れてんだろ?着いたら起こすからよ」

「寝ないもん…」

とは言ったものの、洋一の隣は居心地が良くて、なんていい訳だけど眠気が襲う。


彼の隣にいられることはなんて幸せなことだろうと改めて思った。

「ねぇ、洋一」

「なに?」

「ありがとね」

「おー」

「大好き」

「知ってる」

END

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